【14色目】少しだけ話してあげるよ 〜黄と白の10.5日目〜
雷輝と誇白は教室から出て、外へと向かった。
「弁当なんだね」
「母う……母さんが、体に良くないからって言って、毎日作ってくれるんだ」
「今、母上って言いかけたでしょ」
「わ、忘れて!」
何気ない会話をしながら、誇白は雷輝についていく。
ついた先は唯一の4階教室である音楽室だった。
2人は、音楽室にあるドアから、屋上に出た。
「屋上……こんな高いとこでご飯食べるの初めてだな……」
「いやいや、ここじゃないよ。もうちょっと上」
雷輝は『ボラール』と呟いた。
ボラールとは、空の魔法の一つで、3メートルほど上に浮かび上がることのできる飛行魔法のことである。
呟いた雷輝の体は宙に浮かび、先程二人が出てきた音楽室の上へと降り立った。
「さ、こっちまで来てくれるんなら、昨日の話の続きをするよ」
少しニヤニヤしながら、雷輝は誇白を見ていた。
「た、高いんだね……でも、大丈、夫!」
誇白は、少し怯えた目をしていたが、覚悟を決めたのか『ボラール!』と声高く言い、音楽室の上に転がるように着地した。
「こ、怖かったぁ……でも、これで、話してくれるんだよね?」
雷輝は少し意外そうな顔をしてから、『もちろん』と小さな声で言った。
「じゃあ、食べながら聞いてよ。俺はお金ないし、弁当も持ってきてないからさ」
「え⁉︎ お腹空いてるんじゃないの? あ、それなら、僕のおにぎり食べて! 多分美味しいと思うから!」
「え、いいの?」
「うん! 食べて」
少し申し訳なさそうに、雷輝はおにぎりを貰った。
そして、おにぎりを包んでいるラップを外しながら、語り始める。
それじゃあ、少しだけ話してあげるよ。
まず先に言っておくんだけど、俺の血の繋がり的な意味での身内は、スッゲェ嫌なんだけどあのクソ親父しかいない。
その前提で話は聞いてね?
そしたら、何から話そうかな……じゃあ、まずは、俺の親父と兄さんと姉さんの話かな。
俺には、2人ずつ、兄さんと姉さんがいたんだよね。
まぁ、話したこともないし、これから話すこともないともないだろうね。
多分、全員死んじゃったんだと思う。
話を聞いたことがあるだけで、見たことも会ったこともないよ。
名前は一番上の兄さんが
確か、響は謳歌属だったらしいね。
まぁ、俺も後天性ではあるんだけど、謳歌属で。
それで、兄さんも姉さんも死んじゃったって思うのには一応理由があって。
兄さんたちも、俺も、全員、望まない妊娠で生まれてる。
全部全部あのクソジジイが悪ぃんだ。全部全部。
俺たちはただの快楽の代償さ。
あいつからすれば、邪魔者にすぎない存在だよ。
あいつは全く働かずに酒飲んで浮気してパチスロ行って。
子供たちを養うことなんて全く考えてない。
自分が愉しければそれでいいんだ。
正真正銘、ただのクズだよ。
多分、全員、衰弱死か餓死だよ。
母さんから聞いたんだけど、俺もそうなりかけてたときがあったらしいしね。
それを聞いて悲しいかっていうと、まあ身内が死んでるんだからちょっとはね。
正直言っちゃえば実際寂しいし。
俺はなんで生き残れたのかというと……まぁ、それは次、君があの隠れ家に来てくれたときに話してあげる。
「今日は気が向いたから自分から話しただけ。もし明日も気が向いたら話してもいいかな。」
「そっ……か……」
あまりにも重い話を自分は聞き出してしまったのだなと、誇白は言葉をかけることができなくなった。
「あんまり重く考えなくていいよ。ここまでのことはそこまで気にしてることじゃないからさ」
「そ、そっか……」
「じゃ、今日はもう帰るね。心配しなくていいよ、明日も学校来るからさ」
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