【3色目】出席番号決定試験 〜赤・青・紫・黄の0.5日目〜

試験が終わったあと、紅葉、瑠真、梨良は学校に近くにあるカフェで話していた。


2人がかりであそこまで呆気なくやられたのは初めてだったため、紅葉と瑠真は、梨良に興味があったのだ。


「纛迱さん、君のその機械仕掛けの管みたいなやつって、どうなってるの?」


瑠真が尋ねると、梨良は、目を輝かせて、飲んでいたストロベリーシェイクのストローから口を離し、説明を始めた。


「うーんとね! まず、このおっきい方の管なんだけどこれはアームって呼んでて、中に赤の魔力を流し込めるように赤の細いチューブを入れてるんだ。そのチューブから高温の炎を出して、周りの透明な部分を溶かすんだけど、溶けたまんまじゃダメだから、透明な部分には薄〜く水色の膜を張って氷魔法が使えるようにして、温度を下げて固められるようにしてるんだ!そうやって人間の手みたいな形に加工するんだよ! ほら、普段は縮小魔法を使ってスカートの中にしまってるから手の形だと邪魔でしょ?だからいちいち加工してるんだよ」


ものすごい早口である。


「なるほど、だから中に赤の管が入ってたのか」

「そういうこと!」

「じゃあ、色が変わったのは?」

「実は、赤の管の内側には黄色の管が入ってて、その力を使って電気魔法で、内蔵してるライトを動かせるようにしてるんだよ。水色の膜はすごく薄いから、強めのライトをつければすぐに色が変わってくれるんだよ」


「「へ〜……」」


「小さい方のやつは?」


「尖ってるやつはね、Dr.needle(ドクターニードル)!こっちには薄ーい紫の膜を張ってて、毒魔法以外は流れないようになってるんだ。梨良は紫の魔法が一番得意だから、これを使って毒を……チクっ!……ってね?」


「「なるほ……ど……?」」


「尖ってない方のやつは腕と仕組みは一緒で、レッグって呼んでるよ! 腕だけじゃ仕留めきれない相手もいるから、これを使って相手の隙を突くのが楽しいんだ〜!」


「「……」」


「瑠真、理解できた?」

「仕組みは、ね」

「そうか。俺は仕組みも原理も1ミリも理解できてないよ」

「えー!そんなに難しいことじゃないよ!」


瑠真と紅葉は今、混乱していた


((この子……一体何色の精霊に愛されてるんだ……? それに、複数の魔法を一斉に使うのって相当器用じゃないとできないことだけど……))


まずチューブが赤で一色目、膜の水色で二色目、ライト用の黄色で三色目、Dr.needleの紫で四色目、試験中に瑠真が受けた緑で五色目、紅葉が受けた青で六色目。


少なくとも6体の精霊から愛を受けていることになる。


「えっと……纛迱さん?」


「ん?」


「君は、何体の精霊に愛されてるの……?」


「え? 一体だよ?」


「はァッ⁉︎」


おかしい。そんなはずはない。

一体の精霊が持つ色は一色のはずだ。


紅葉は叫んだが、いつもはあまり感情の起伏を見せない瑠真でさえも驚いた顔をしてた。


「うーんと、見せてあげようか?」


「「え……?」」


2人はもっとわからなくなった。


一体の精霊が持つ色は一色のみ、そして精霊は普通見ることはできない。


この子……意味がわからない……


梨良が『おいで〜』と言うと、梨良の前に紫色の煙が浮かんだ。


その煙はどんどんと形を成していき、犬のような形になった。

……あまり可愛らしい犬ではない。毛が短い犬だ。


「これが、梨良の可愛い可愛いマーブルちゃん!」

『ワンっ!』


「「見えたァッ⁉︎」」


今度は2人で叫ぶ、かつ2人とも立ち上がった。


ちなみに2人で叫んでいたが、声の比率は瑠真が2、紅葉が8ぐらいだった。


しかし、声が大きいことに変わりはないので、周囲の人たちがこちら側を睨みつけてくる。


2人は、口元を抑え、再び席に座った。


マーブルの体は、紫を基調としているが、それ以外の様々な色の毛が生えている、名前の通り、マーブル模様の体だった。


「なんかね、生まれたときからこの子とは一緒なんだけど、梨良、この子の体にくっついてる色の魔法、全部使えるの」


「「…………えェエッ⁉︎」」







場所は変わり、このカフェから少し離れた場所にある、とある民家。


「……ただいま」


黄の少年の住む家だ。


彼は、不機嫌そうにそう言うと、身につけていたマフラーを解いた。


「なんだ、今の言い方は」


そう言ったのは、酒瓶を持ち、少し顔が赤くて、みすぼらしい見た目をした、中年の男性だった。

長い前髪をセンター分けにし、雑に後ろ髪を束ねている。


「親……?そんなもん知らねぇよ」


少年の持ったマフラーがバチっと音を立てる。


「お前の父親は俺だ。まだそんなことも理解できねぇのか」


黄の少年の父親の、痩せ細った体から出るその声は、とても低いものだった。


「はぁ? 理解も何もねぇだろ? 俺は確かにアンタと血は繋がってるかもしれないよ。けどな、それ以外になんの縁もありゃしねぇんだよ。さっさとくたばっちまえ、クソジジイ」


少年の持ったマフラーが立てる音が、より一層大きくなる。

そして、緑の少女と戦ったときと同じような、鞭のような形状に変わっていく。


また、着ているロングコートにもほのかな電流が走った。


「反抗のつもりなら俺は許さねぇぞ? あぁん⁉︎」


父親が持った酒瓶が、少年に向かって飛んできた。


その瓶は、少年の右腕に直撃した。


「……ってぇなぁ……そういうことすっからオメェは父親じゃねぇっつってんだよ!」


少年は、手に持った黄色の鞭で、父親に殴りかかった。

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