【5色目】出席番号決定試験 〜白・黒の0.5日目〜

試験後に家に帰り、玄関で『ただいま帰りました』と言った瞬間、


「よくやったわ、黎!」

「やはり次期月影つきかげ家当主に相応しいのは黎のようだな」

「本当よ! あなたはやっぱり天性の才覚を持っているわ!」

「うむ、申し分ない結果だ」


黒の少女、月影つきかげれいは、父親と母親にそう言われた。


しかし、黎は不機嫌だった。


なぜなら……


「……ここにいるのは私だけではありません。誇白に対しての気遣いの言葉はないのですか?」


双子の弟である、白の少年もとい、月影つきかげ誇白こはくが隣にいるのに、自分だけが賞賛されたからだ。


「落ちこぼれにかける言葉などない」


父親はそれだけ言い放つと、こちらに背を向け、母親と共に歩いて行ってしまった。


無駄に豪華な廊下に、彼らの足音が消えていく。


「黎、僕なら大丈夫だよ。ほら、早く行こう?」


誇白は笑顔でそう言ったが黎は不機嫌そうな顔で『えぇ』とだけ言った。




夕食の時間になった。

高級感のある日本食に、彼らが手をつける。


「いいか、明日から学校が始まる」


「「心得ております」」


「お前たちは月影一族の一員として、代表として、あの学校に通っているのだ」


「「はい」」


「勉学、魔法、音楽、体育……全てにおいて完璧でなければならん」


「「……」」


「返事は?」


「「……はい」」


毎日のように言われ続けた、月影家の家訓を、また今日も言われ、2人は正直うんざりしながらそそくさと食事を終え、部屋に戻った。



「また今日も言われたわね」

「うん……」


2人に部屋は同じである。

一つの部屋を半分ずつで使っているが、この家にはまだ部屋が余っている。

彼らの中がいいからこそ、望んでこうしてあるのだ。


2人は、少し豪華なデスクの椅子に腰掛け、何かを書きながら会話を交わす。


「ほんとに、これを言うのが何回目なのかも忘れてしまったけれど、こんな悪魔の一族に生まれてしまって残念」

「女は黒、男は白っていうのも、正直嫌だよね……」

「そうね。やっぱり、ここまでする意味がわからないわ」

「そうだね……」


(また僕が弱いせいで黎が苦しんじゃってる……謝った方がいいのかな……)


誇白が少し考えたあとに『……ねぇ、黎』と話しかけると、返事は返ってこなかった。


……寝てしまったようだ。


誇白は、少し苦笑いを浮かべて、黎のベッドの上にある薄手の軽い毛布を黎にかぶせ、デスクの電気を消した。


そして、なにかを覚悟したような笑顔で、


「また明日……僕、またこうならないように、ちゃんと頑張るからね」


と言って、部屋の電気を消した。

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