第5話
「ここのシャインマスカットも違うみたいだね」
「そっか」
今日も私はいつも通り一日の時間割をこなし、彼はやはり誰にも目をむけられることなく放課後を迎えた。
私にもいつか見えなくなるのだろうかと、太腿の辺りまで消えかけた圭一を見ながら思う。
「次はどこのスーパーに行こうか。この町も全部回っちゃったけど」
「うーん、そうだなあ」
私は考えた。次のことを。
もう最後になるかもしれない、次のことを。
「今日はもう帰ろう、圭一」
「え、僕たちの戦いはまだまだこれからじゃないの」
「それは物語終了の合図だよ」
帰ろ、と私がもう一度言うと、今度は彼も黙ってついてきた。
日が暮れかけていても気温の下がらない夕暮れを私たちは並んで歩く。子供の頃もこんな感じで一緒に帰り道を歩いていたような気がする。
この夕焼け色の道が、楽しいような寂しいような気持ちにさせるのは昔の思い出が私の中に残っているからなのだろう。
「どうしたの彩夏。僕また何かしちゃった?」
「え、なんで?」
「なんか怒ってるみたいだったから」
歩いている途中、圭一はこちらを覗き込むようにして尋ねた。
不安そうに眉を寄せる彼に、私は微笑みかける。
「怒ってないよ」
そう答えると彼はほっと胸をなでおろした。顔に出てしまったか、と少し反省する。
心の内で、私は腹を立てていた。それは圭一や世界に対してではなく。
あまりに利己的なことばかり考えていた私自身に対してだ。
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