第15話
「教授、
宮沢が、すがるように聞いた。
「会えたよ。今は九州にいる」
「私たちが、低温睡眠してしまったので、とても心配していたんです。本当に良かった」
宮沢がそう言うと、いつの間にか目を覚ましていた篠原が、
「そうか。
と、ぽつりと言った。
「目覚めたな」
金光はそう言って、口元を緩ませた。
「お前に世話になるとはな」
篠原も、ふっと微かに笑った。その後二人は、必要な情報を共有するため、長い話しが続いた。そのうち、眠り続けていた秋山が目を覚ました。
「……」
身体を起こすと、状況に困惑した表情のまま凝固している。
「秋山さん。よかった、目が覚めて。低温睡眠が失敗して、死んじゃったのかと思いましたよ」
と宮沢が妙に明るく、笑えない冗談を言った。
「生きていると思いますよ。でも、これはどういう状況でしょうか?」
五十嵐からの手短な説明が終わると、
「それで、蒼君は無事なんですね。よかったです」
秋山も、蒼の事が一番気がかりだったようだ。
「ところで、蒼君はどうやって九州までいったんですか? 一人で飛行機に乗れたんですか?」
秋山の質問に、五十嵐が答えた。
「その説明には、少々、時間がかかるが」
そう前置きをして、蒼が浜で倒れていたところから、順を追って話した。
「そんなことになっていたんですか?」
「可哀想に……」
秋山と宮沢は口々にそう言った。
一方、九州の大学では、再会できた母に、蒼がこれまでの事を語っていた。美琴は微笑みを湛えながらそれを聞いていた。蒼の語る内容は、とても危ういものだが、美琴は篠原を理解できていたのだろう。何を聞いても驚く様子はなかった。
「ねえ、凄いでしょう?」
蒼が笑顔で言うと、
「ええ、本当にパパは凄い人だわ。だから尊敬しているの」
と美琴は笑みを返した。
「ところで、蒼君。なんで、浜で倒れていたの?」
それまで、黙って聞いていた武田は、疑問に思っていたことを聞いた。
「ああ、それね。みんな、冬眠しちゃって、僕一人になったから、母さんに会いに行こうとしてね。あんまりお金を持っていなかったから、途中まで歩いて行こうと、海沿いを歩いていたらね、エネルギー切れになっちゃった」
蒼が、あっけらかんと言うと、美琴が声を上げて笑った。武田はぽかんと呆けた表情のまま固まった。もっと、何か事件でもあったのかと想像していたのかもしれないが、何とも間の抜けた話しに拍子抜けしたようだ。
「蒼ったら、面白いわね」
笑い涙を拭きながら美琴が言うと、
「母さん、笑いすぎだよ」
と言って、蒼も可愛く笑った。
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