第13話

 金光かねみつ教授は、まだ目を覚まさない。それだけ疲労が溜まっていたのだろう。片岡は五時間ほどの睡眠をとり、シャワーを浴びて着替えて来た。着替えは蓮宮が気を利かせて、自分の物を持ってきたようだ。下着は新しい物を買ってきた。

「蓮宮さん、ありがとうございます」

 服のサイズは、蓮宮の物でぴったりだった。二人並んでみると、体格はよく似ていた。

「食事をどうぞ。コンビニのサンドウィッチとコーヒーだけど」

「ありがとうございます。いただきます」

 蓮宮も片岡に並んで、一緒に食べ始めた。

「彼らは眠ったままだけど、どういう状況かしら?」

 蓮宮が聞くと、

「今はまだ、眠らせているのですが、宮沢さんと秋山さんは機械化された身体に不具合があり、それを調整しました。上半身は生身のままなので、機械の身体との融合が上手くいっていなかったようです。彼らが目覚めてからも、その後の経過観察が必要です。篠原教授は、身体のほとんどの臓器が、病に侵されている状態でした。それで、仮死状態にして、病気の進行を止めていたようです。もうすでに、回復の余地はないとのことで、金光教授は、篠原教授のすべての臓器を機械へと置換しました。幸い、このラボにはその材料はそろっていたので、大して時間はかかりませんでした」

 片岡の説明を聞いた蓮宮は、

「あら、それじゃ、みんな人造人間になったのね」

 とさらりと言った。


 その時、金光教授の電話が鳴った。

「片岡です。金光教授は、只今、就寝中です」

 その電話に、片岡が出て、応答した。

「はい。了解しました。お伝えします」

 片岡はそう言って、電話を切った。

藁科あらしなあお君が目を覚ましました」


 それを聞いた面々から、どよめきが生まれた。

「さっそく、話しを聞きたいが、今はまだ九州にいるんだよな?」

 五十嵐が聞くと、

「はい」

 片岡は短い返事をした。刑事たちの気は急いているようだが、仕方のない事だった。

「教授が起きたら、彼らを目覚めさせます。彼らからも話が聞けるでしょう。教授が寝てから、どれくらい経ちましたか?」

 片岡が聞くと、

「そろそろ、六時間ほどになるわね」

 蓮宮が答えた。

「それなら、あと一時間ほどで起きると思います」

 片岡が言ったとおり、金光教授は一時間後に目を覚ました。


「腹が減ったな」

 金光の最初の一言がこれだった。

「はいどうぞ。おにぎりです」

 片岡が、金光の好きなおにぎりの具材を知っていたので、それをコンビニで買ってきた。

「おお、気が利くな」

「刑事さんが買ってきてくれました」

「それは、すまないね。ありがとう」

 お礼を言うと、金光はおにぎりに食らいついた。

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