第10話
五十嵐、須藤、蓮宮の三人は、現場から引き揚げ署へ戻った。榊原を含む他の五人の刑事は現場に残り、現状維持に努めた。
五十嵐が見知らぬ男の身元を調べると、警察署のデータベースでその素性が明らかとなった。
男の名は、
「人権保護ね、繋がったわ。秋山が宮沢を救い出そうとしたのは、彼の使命感のためだったのね」
蓮宮が言うと、
「それで、どうして、秋山があの場所にいたんだろう?」
須藤が疑問を投げかけた。
「さあ、どうしてかしらね?」
数時間に及ぶ作業は無事に終わり、蒼の動力は電気へと置換された。身体を開いた傷は、綺麗に閉じられたが、まだその傷は生々しかった。
「しばらくは眠らせておこう。それで、誰からだったのかね?」
金光教授は、先ほどの電話の事を片岡に尋ねた。
「蓮宮さんです。篠原教授と、宮沢さんが見つかったとの連絡でした」
片岡は淡々と答えた。
「そうか。それは良かったと言うべきかな? それで、生きていたのかね?」
金光も冷静に受けた。
「分かりません。ただ、見つかったという報告があっただけです」
片岡の言葉に、金光はただ、黙ってうなずいた。
藁科蒼の身体は、研究施設に預けたまま、金光と片岡は急ぎ、東京へと向かった。
金光らは東京へ着くと、すぐに警察署へ行き、五十嵐から状況の説明を受けた。
「やれやれ。忙しいな」
金光はそう言いながらも、口元は緩んでいた。話しを聞いただけで、篠原たちは生きていると確信したようだ。さっそく、金光と片岡を連れて、篠原たちがいる研究所の現場へと戻った。
「これから、彼らを目覚めさせる。悪いが君たちは出ていてもらえるかな? 助手は片岡だけで足りる」
金光にそう言われて、片岡以外は研究室から出た。
「では、やるかね?」
片岡に言うと、彼女は、
「はい」
とだけ答えた。いつでも準備は出来ているようだった。
それから数時間、蓮宮と刑事たちは車の中で過ごした。夜も明け、日が高く昇っていた。その間、交代で休憩、食事をとっていたが、研究所の中にいる二人は、食事も取らず、作業を続けていた。
「大丈夫ですかね? 中で二人とも倒れていないですかね?」
須藤は教授たちの事を心配していた。
「研究者って、みんなあんな感じよ。疲れる事も忘れて没頭するんですって。でも、終わってからが大変よ」
蓮宮が他人事のように言った。
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