第6話

 核燃料の手配が出来ないか、刑事たちが調べている。

「簡単ではないぞ」

 それを見ていた教授がぽつりと言った。核燃料の使用、管理については国際規制もあり、簡単には許可は下りないという。

「この彼を私が改造してもいいのかな? 何も原子力なんぞ使わんでも、彼を動かせるだろう」

 教授の言葉に、

「それは彼のためですか?」

 と片岡が質問した。

「ああ、もちろんだ。安全な作りではあるが、爆弾を抱えている事に違いはない。普通に生きていけるだけのエネルギーさえあればいいだろう。そう思わないかね?」

「ええ、もちろんです。彼が普通で穏やかな日常を過ごせることを願います」



 そこへ、五十嵐と須藤が帰って来た。

「五十嵐さん、お帰りなさい。何か分かったかしら?」

 嬉しそうに蓮宮が声をかけたが、五十嵐は真っ先に机に向かい、ノートパソコンを開いた。

「河合、奴の素性は調べたか?」

「はい、これです」

 河合は印刷した紙を五十嵐に渡した。五十嵐が開いたパソコンを覗き込んだ教授が、

「宮沢君がどうかしたのかね?」

 と聞いた。五十嵐はその声に振り向き、

「あんた、誰なんだ?」

 と聞いた。

「私は金光かねみつだ」

「宮沢を知っているのか?」

「ああ、私の教え子の一人だ」


 五十嵐と須藤には、これまでのいきさつを話した。

「なるほどな。それで、あんた、宮沢の失踪は知っていたのか?」

 それを聞いた教授は、

「それは本当かね? 知らなかったが、事件に関係があるというのかね?」

 と答えた。

「あんたなら、気付いているんだろうよ。あの人造人間を誰が作ったのか」

 五十嵐の言葉に、皆、驚いた表情をした。教授以外は。

「君は鋭いね。これには宮沢君が関わっているんだろうな。それと、あいつも関わっているだろう」


 教授があいつと言った人物について、語り始めた。


 金光教授の学友で、篠原という男がいた。二人は競うように専門知識を学び、研究を重ねてきた。良きライバルだが、性格はまるで違った。研究にのめり込み友人を作らず没頭する金光に対し、篠原は金光と同等の知識を身に着けながらも、人との交流もあり、女生徒からも人気があった。篠原は誰もが羨むほどの美貌も兼ね備えていたのだ。

 二人は大学院でも共に学び、その後は研究者として大学に残った。そのうち、篠原には恋人ができた。彼女の名は藁科わらしな美琴みこと。篠原より四つ年下で、美人だった。二人は仲睦まじく、誰が見ても似合いのカップル。二人は結婚し、子供もできたが、研究で忙しい篠原は、自宅へ帰ることも少なくなり、数年後には離婚してしまった。

 藁科美琴は実家へ帰り、子供は健やかに成長した。そこまでは良かったが、その子供が十五歳の時に交通事故に遭い、死んでしまった。その時は誰もが悲しんだ。しかし、篠原だけは違った。息子はまだ生きていると、その遺体を持ち帰って姿を消した。

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