第2話

 警察署では、刑事たちが混乱と困惑で、頭を抱えていた。

「何なんだ? あれは一体」

 五十嵐いがらしもそうつぶやきながら、うろうろと歩き回り、理解に苦しんでいた。

「あら、どうしたのよ。みんな難しい顔をして」

 場違いに元気な声が響いた。

「また、あなたですか」

 須藤すとうはそう言いながらも、少し表情が明るくなった。

「何か不可思議な事件でもあったのかしら? 私にも聞かせてちょうだい」

 蓮宮はすみやの登場で、刑事課の空気が変わった。


 鑑識によると、運ばれた遺体は、人の身体を機械化にした人造人間なのだという。


「私が来て良かったわね。私の情報が必要でしょう?」

 蓮宮は、いつものように高飛車な態度で刑事たちに言った。

「話しを聞かせてくれ」

 五十嵐が言うと、

「条件は分かっているわよね?」

 蓮宮がそう返すと、五十嵐は、

「ああ」

 とだけ返事をした。これで、彼らの契約は成立した。


 蓮宮は調べた結果、得られた情報を、五十嵐たちに話した。


 転載ブログへの投稿コメントの幾つかは、呼びかけに対して賛同し、みんなで助けよう、これを拡散しよう、という内容だった。中には批判的な意見もあり、助けを求めている彼は、本当に存在するのか? どこの誰なのか? ガセネタだろうなどと書かれている。

 いずれにしても、ブログには詳しい内容が書かれてはいなかった。公開されない個人間のメッセージまでは見られないから、そこで詳しい情報交換などをしているのかもしれない。


 ブログから分かる事は、助けを求めている人を、転載ブログの筆者が彼と呼んでいることから、男性と思われる。

 電気信号により、機械を動かす研究という元ブログから、電子工学の分野に精通している人物。


「転載ブログの筆者と、元ブログの彼が誰なのか調べてくれないかしら? それと、人造人間に会わせて欲しい」

 蓮宮の要望は、すんなり通った。


 人造人間は衣服を脱がされて、台の上に寝かされ、身体には白い布が掛けられていた。

「ねえ、この子、本当に死んでいるの?」

 蓮宮が妙な事を言った。

「はい。司法解剖も終わっています。というよりも身体は全て機械で、脳だけが人間のものでしたので、これ以上は私の分野ではありません」

 そう言ったのは、司法解剖を行った医師の吉村だった。

「そうね。人造人間は電子工学なんですって。その手の専門の人に知り合いはいないかしら?」

「いませんね。私は医学専門ですから」


 蓮宮は、人造人間の綺麗な顔を見ていた。

「ねえ、この皮膚は人工なのかしら? 本物みたいに見えるけれど」

「これは人の皮膚から培養して作られています。見た目は生身の人間の皮膚と同じですよ。だから、このご遺体が人間だと思ってしまったんですよ」

「あら、彼は人間よ。脳も皮膚も人間のものでしょ? 何かの理由があって人造人間になったのよ。私はその理由が知りたいの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る