蓮宮玲子の都市伝説③~麗しのフランケンシュタイン~

白兎

第1話

 若い男性の遺体が、浜に打ち上げられているとの通報があった。


「綺麗な顔ですね」

 須藤すとうまもるが思わず言葉を漏らした。

「若いのに気の毒だな」

 五十嵐いがらし耕造こうぞうは遺体に手を合わせた。



 蓮宮はすみや玲子れいこは、新たな都市伝説の取材に苦戦していた。

「それで、同僚の片岡かたおか瑞希みずきさんが人造人間ではないかと?」

 蓮宮が言うと、

「そうよ絶対。だって、あんなに綺麗な顔で、スタイルも完璧、非の打ち所がないのよ。感情も見せない、プライベートも一切分からない。周りの男性社員がみんな、彼女に魅了されているのよ。きっと、もう何人かは連れて行かれて人造人間にされているのよ。あ~怖いわ……」

 ただの愚痴にしか聞こえないような内容の事を、延々と話し続ける女に、そろそろ嫌気がさしてきた。

「お話しを聞かせて頂き、ありがとうございました」

 蓮宮は笑顔を見せて、女と別れた。

「あ~、時間の無駄だったわ」


 新たな都市伝説『麗しのフランケンシュタイン』、こんなネーミングを誰がつけたのか、センスがいいのか悪いのか。フランケンシュタインというのは、イギリスの小説家の物語に出てくる主人公の名前だが、いつしか、人造人間の怪物の名前として、世間では認識されている。


 都市伝説の内容は、ある組織が、人造人間計画なるものを密かに行っているらしいというものだった。なぜ、生身の人間を人造人間に改造するのか、その理由も分からない。


 美しい容姿をした人造人間に惑わされて、何人か姿を消しているという噂が流れた。この大都会では、失踪など珍しくもないが、失踪前に美しい人とどこかへ姿を消したという話が出ていた。


「今回は、ちょっと難しいわねぇ」

 お気に入りのカフェで一人、蓮宮が呟く。この日、三人から話しを聞いたが、どれもピンとこなかった。

 蓮宮はノートパソコンを開き、もう一度、都市伝説『麗しのフランケンシュタイン』について調べてみた。

「この話、どこから始まったのかしらねぇ」

 独り言を言いながら、調べていると、気になる情報が目に入った。


 それは、個人のブログをコピーして転載されたものだった。



 私は脳から発せられる電気信号により機械を動かす研究をしていました。ある日、私の尊敬する教授から、協力してほしいと頼まれました。その内容を聞き、私は即座に断りましたが、その後、監禁され、その研究を強要されました。ここでは、詳しい内容を書き込むことは出来ませんが、誰か、私をここから救い出して下さい。


 これを転載した人は、事件に繋がるかもしれないので、これを拡散して、彼を救い出そうと呼びかけていた。


 この元ブログが書かれたのが二年ほど前で、転載ブログも、その後の更新はなかった。


「事件の匂いがするわね。この人たち、今はどこにいるのかしら?」

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