第10話

雪のお葬式には多くの人が並んだ。大学生や雪が高校のときのバスケのチームメイトや監督に先生、親戚や友達まで……雪が愛されてた証拠やな。と心の中で思った。雪の家族を見ると3人ともなぜか穏やかな顔をしていた。3人の話を聞くと

「雪。また会いに来てね。」

「雪ならあっちでもうまくやってるだろうな。」

「雪いまごろどっかでつまずいてんじゃねぇの?」

とみんな雪があっちで元気にやってると思っていたからだ。

俺は雪が見つけた黄色いフリージアの花を持っている。雪が俺に似てるって言うた花……。だけど雪のほうがフリージアに似てるで。雪のほうが無邪気に笑うし、フリージアの花言葉は他にもあって







「天真爛漫」







和名だとフリージアは香雪蘭って書くねん。やから雪のほうが似てるんや。










俺はスーツから雪からの手紙を読んだ。


たった一言やけどな。














最後までありがとうって言えなくてごめんねって。






別に気にしてないし、むしろこっちのほうがありがとうやで雪。













あれから俺は5年後保険会社に勤めるようになった。実は雪のお父さんから仕事とお客さんを譲り受け、家族を持つようになった。俺は女バスのあのお調子者の柚月と結婚したんや。

驚いたろ?

そして俺たちにも子供ができたんや。男の子で真っ白な純粋な気持ちでおってほしいちゅうことで名前は「せつ」と名付けた。

どうや?漢字は一緒でも読み方は違うやろ?

今柚月は2人目の子を身ごもってる。女の子や。

なぁ雪。俺はいつまでたっても雪のこと忘れへんし、みんな雪のこと覚えてるで。だから安心しぃ。たまーにこうやってお前のはかで相談や雑談しに来るで。



お前フリージアの花を持って……



雪の周りにはたくさんのフリージアが笑って咲いていた。



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フリージアが咲いた 明智 依毬 @moonlight52

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