第6話

あのあと気づくと家の前に着いていて、蓮はいつも通りだった。

「ん。沖縄そばやで。」

「ありがとう。莉奈。」

「ええって。あ!あとであそこのチョコバナナ屋さんでじゃんけんしよーや!」

「うん。」

今日は文化祭で莉奈と一緒に回る約束をしていた。莉奈はこういうお祭りが大好きでいつも以上に明るくはしゃいでいる。莉奈には私が病気のことも話した。すると莉奈は

「ほな、最後のサンサンの思い出は明るいものにしよーや!」

と言い、私の夢でもあった友達と一緒に文化祭を回るということを実現させてくれた。

私と莉奈は沖縄そばをすすった。初めて食べたけど麺も美味しいし、味も優しくてやみつきになる味。私の大学は色々な県からくるため、ご当地料理や留学生が振る舞う伝統料理が本場で食べれるからとてもいい機会だ。

莉奈と私は沖縄そばを食べ終わるとチョコバナナの屋台に並んだ。じゃんけんなんて運なのにお金払ってまでやるって……まぁそこが楽しいんだけどねと心の中で思った。

私は莉奈の姿を見て少し子供らしくて可愛いなと思い、自分の番がやって来た。すると私の名前を呼ぶ声が。

「雪。」

「蓮……」

今日ばかりは会いたくなかった。だってこれで最後だって思いたくなかった。何も知らない蓮は私を見て笑顔で

「可愛いお姉ちゃんにはサービスするで?」

冗談ぽく言った。蓮は私にじゃんけんをさせず、チョコバナナを2本私に差し出し、フルーツ飴を口の中に入れた。

「!?美味しい……」

「せやで!俺特製やで!サービスするって言うたろ?」

とあのまぶしい笑顔だった。

「んふふ。ありがとう。」

私はふにゃふにゃと笑った。心が暖かくなった。こんなに生きたいと思うのは蓮のおかげ。君がくれたこの感情。この人に二度と会えないなんて思いたくない。そう思うとすごく切なくなり、私は屋台から離れ、じゃんけんに負けた莉奈にチョコバナナを渡し、人気のない所で1人で泣いた。

「ふ……うぅ……。」

苦しい。たすけてって言いたい。だけどこんなこと知られたくない。私はただただ泣いた。私の願いは空に届くことはなかった。

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