第5話
「私関節リウマチっていう病気なの。
……私ね、もうすぐ死ぬんだ……。」
私はバスケ部が使用している体育館の裏側に連れてこられ、花圭琉に話した。必死に紡いだ声。震えてるし声も小さいと思う。だけど花圭琉は必死に頷いて聞いてくれた。
「そうなのか……辛かったな。」
と花圭琉は私の頭を撫でてくれた。その優しさに私はまた泣いてしまった。
「なぁ、蓮にはこのこと話さへんの?」
「……1番大好きな人にこんなこと言ったら嫌われちゃうよ……」
私は花圭琉の言葉に顔を俯いてしまった。大好きな人には嫌われたくないし、1番輝いているときの自分の思い出を持っていてほしい。
「ほな、泣くなって。俺が悪かったけん。」
と花圭琉は子供を宥めるような顔をしてこちらを見た。
「……ならジュース買って!」
「いくらでも奢ったる。」
と少し焼けた素肌でこちらに向かってニコッと笑った花圭琉だった。
その後私は疲れて寝てしまい、気づくとすっかり日が落ちていて私と花圭琉は恋人のようにお互いの方に頭を預け寝てしまっていたらしい。
「ゆっきー?起きて。今日俺が車で連れて帰るで。」
「ん……じゅーす……」
「せや。帰り道の途中で奢ったるから。起きて。」
私は寝ぼけていて重い瞼を開こうと一向にしなかった。しかし、誰かに顔をむにゅっと挟まれ一気に目が覚めた。この匂いにこのゴツゴツした手……
「蓮?」
「せやで。探したけん。帰るで。」
「蓮。今日は俺が送るで。」
「いや。俺が送るからええ。世話かけたな、花圭琉。」
と蓮は言うと私をおんぶし、駐車場に向かった。蓮は車を持っていてよく色々なところに連れていってくれる。私は正直体がしんどく、反抗する力もなかったので蓮に身を任せた。私はこの愛おしい人に会えるのも少ないと思ってしまい、切なくなった。私は蓮を後ろから抱きしめるような形で寝たフリを続けた。どうか今だけは許して……。
蓮side
借り物競争とか出るのほんとにダルいって。だけど出ないと出席稼げへん。俺はスタートのピストルの合図が鳴りお題まで走った。
「……?2つ結びの女子?」
俺はキョロキョロ周りを見回した。だけど以外に見当たらなくて探してからだいぶたつと雪の隣に2つ結びの女子がいてなにか揉めてる。俺は一目散にその場に向かい雪の隣にいるやつを借りた。そのときなぜだろう。雪が泣いているわけでもないのに
「たすけて」
と言っているような気がした。後で様子を見に行こうと思いゴールテープまで軽くジョグして向かう。途中でこの2つ結びの女はわざとこけたり、俺にベタベタ触ってきていてまわりも分かるくらい気持ち悪い。
そんなことを思っているうちに花圭琉がゴールテープを切った。そのときお題の紙が隙間風から見えた。
「大切な人……か……」
俺の大切な人……それは雪だ。花圭琉と雪はどこかへ行ってしまった。俺は金縛りのように動けなかった。もし雪が花圭琉を選んだら……。俺は苦しかった。
「蓮くぅ〜ん?美々のこと選んでくれたんだよねぇ?美々のこと好きなのぉ?」
俺はいつもみたいに冷静に考えられなくて
「ふざけんな、この尼。」
とドスが聞く声でその女に言った。女もその周りにいたやつもビビってた。だけど俺は花圭琉と雪を探すことに頭がいっぱいだった。
やっと雪を見つけたと思ったらそこには雪を優しい目で見る花圭琉がいた……。
俺は感情に身を任せて雪の顔をむにゅっと手で挟んだ。すごくぶちゃいくで吹き出しそうになったがしっかり冷静を装った。
「蓮?」
「せやで。探したけん。帰るで。」
と雪をおんぶし、俺は花圭琉にまた明日と言ってその場を立ち去り、駐車場に向かった。雪はすごくしんどそうにしていて、体調が悪そうだった。すると雪は寝ぼけているのか分からないが俺の首元から下の辺に手を回してきた。ヤバい……俺の心臓の音バレる!
俺は歩くスピードを早めた。この音がバレませんように……。
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