第10話 リルとの修行と身体強化魔法③
「ぎゅおっ!」
「……っと!………あぶねっ!」
俺は突っ込んで来るリルをギリギリで半身になって躱す。
今は絶賛、リルとの組手中だ。
リルとの修行が始まってからおよそ半年が経過し、俺は一人でもリルと渡り合えるようになっていた。
だが、まだまだリルは本気じゃないらしい。
本気のリルと戦いたいが、身体強化魔法を使えなければ本気は出せないと言われ、俺もリルも魔法は無しで戦っている。
「ぎゅううぅん!」
俺の後ろへ回り込んだリルは地面を掴んで減速し、さらに俺に向かって勢いを付けた右ストレートを繰り出してくる。
「おっ………おおお!!!」
俺も負けじと右ストレートで応戦し、お互いの右拳がぶつかり合う。
しかし、勢いがある分リルが打ち勝ち、俺は後ろへと飛ばされる。
「……よっ……あぶねぇあぶねぇ……」
だが、俺は飛ばされる直前に後ろへと飛び、勢いを殺す。
この半年、吹き飛ばされることが多くて、受け身とかはめちゃくちゃ上手くなったんだよなぁ………
「流石やなぁ兄ちゃん、受け身とんの上手いわ」
「まぁ、この半年受け身の練習する機会が多かったからな」
俺達は軽い雑談を挟みつつ再び拳を交える。
―――――――そして、三年の月日が経った辺りのことだった。
「身体強化魔法………アンリミテッド」
そう呟いた俺は、深紅のオーラを身に纏っていた。
「で…出来た………のか?」
俺は自身の体を見回す。
それは、かつてリルと戦った時にリルが使用していた、あの技と同じものだった。
「お見事!流石や兄ちゃん」
俺のすぐそばで見守っていたリルはうんうんと頷きながら拍手している。
「もきゅっ!もきゅう!」
「アニキ……努力が実りましたね………うぅ」
モップはぴょんぴょんと飛び跳ね、マグナはハンカチで涙を拭っている。
皆が自分のことのように嬉しそうにしているのを見て、思わず笑みがこぼれる。
「リルの教えが上手かったからだよ!でも、皆…ありがとうな!」
俺は少し照れながら三人に礼を言う。
「ええか兄ちゃん、身体強化魔法アンリミテッドはちょっと特殊でな、少しずつ段階を引き上げることが出来るんや」
「段階?」
引き上げる……ってどういうことだ?
「肉体的負担は大きくなるけど、さらに身体強化を重ねることが出来るんや」
う~ん?………よく分からんが、アンリミテッドの上がある………ということか。
「まぁ、とりあえず修行しながら教えていくわ」
「ああ、頼む!」
こうして俺は、遂に念願の魔法を覚えることができた。
俺はもっと強くなれる。そう考えると、戦闘民族だからなのか、ワクワクが止まらなかった。
――――――――そして、リルとの組手が本格的に始まろうとしていた。
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