第10話 リルとの修行と身体強化魔法②

 昼食後、俺達は草原地帯へと来ていた。

 肌を撫でる優しい風、暖かくも熱すぎない太陽、さわさわと風で揺れる草花。

 そして――――――

「……ふ……ふぬぬ………ぬぅぅ…………」

「ほらほら兄ちゃん、これぐらいはまだ基本のきの部分やで!」

 草原に着いたリルはまず、基礎体力作りの為に腕立て伏せをやろかと言い出し、土魔法で大きな岩を生成し、俺に背負わせた。

 リルほどもある大きな岩を背負った時点で潰されなかったのは、俺の肉体が強くなっているからだろう。

「兄ちゃん、この後組手もあるんやで?」

「お……おぉ………」

 組手――――この後にやる………のか………

 俺、もう頭が回らなくなってきてるんだけど………

「ん~、しょうがないから、あと百回で終わろか」

 聞き間違いか?………あと百回………嘘だろ………

 今で何回目だ?―――俺は必死に考えるが、答えは出ない。

「い…今で……なんっ……かいっ…………めだ…………」

「今?今で二十回ぐらいやったかな?」

 …………まだ二十…………もう腕が上がらないんだけど…………

 

 こうして、俺とリルの修行は始まった。リルは俺が言った通りにとても厳しくしてくれるみたいだ。

 いや~本当――――――いきなりここまでキツイと考えが至らなかった、能天気な自分を恨むね――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 リルとの修行が始まって数日、ようやく岩腕立てと組手に慣れて来た頃、リルは言う。

「兄ちゃんには、身体強化魔法を覚えてもらう」

「身体強化魔法!?」

 それって、ゲームやアニメなどでよく見る奴じゃないか!

 遂に俺も魔法を使えるようになるのか…………何か、改めて異世界に来たっていう実感が湧いて来るな。

 それに、身体強化魔法なら俺の戦闘スタイルに合っている気がする。

 ………そもそも、剣とか槍とか弓矢とか、転生前の世界でも触ったことないので、拳で戦うしかないんだが…………

「まぁ、身体強化魔法って言うてもワイのはちょっと特殊やから、兄ちゃんが使えるかはやってみな分からんけどな」

「そうなのか………分かった!」

 使えなければ残念だけど、やってみなくちゃ分からないからな!

 それに、リルの身体強化魔法は特殊なのか………他のがどんなのか分からんが、めちゃくちゃ習得したい!

「まずはそうやな、兄ちゃんに魔力があるか調べよか」

「魔力………どうやって調べるんだ?」

 俺に魔力が無ければ使えないのか………それどころか、ほかの魔法も使うことが出来ないということか――――魔力、あってほしい―――――――

「ほな、まずは自分のおへそらへんに意識集中してみて」

「おへそ………こうかな」

 俺は目を閉じ、自分のへそ辺りに意識を集中してみる。

「出来たら、そこがじんわりとあったかなるイメージしてみ」

「じんわり………暖かく………」

 俺はリルの言う通りにイメージするが――――――う~む……よく分からん………

「駄目だ………全然イメージ出来ねぇ……」

「ガハハッ!そうか!」

 俺はガクッと肩を落とすが、リルは楽しそうに笑っていた。

「そうそう簡単に魔力を感じることは出来へんからな、ゆっくりやってこ」

「本当か!…良かった……」

 俺はリルの言葉に安心する。

 全く、それならそうと最初に言ってくれれば良かったのに………

「さてと…ほなそろそろ始めよか!」

「うしっ……了解だ!」

 そうして今日も、俺の修行は日が暮れる時間まで続くのだった。

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