第10話 リルとの修行と身体強化魔法①
デスパイダーとの戦いから早くも数日が経った。
俺はその戦闘で、かなり深い傷を負った……はずなのだが、何事も無かったかのように体の傷口は塞がっており、毒の影響も無かった。強いて言えば、ここ数日間全身の筋肉痛が酷くて動くのが辛かったぐらいだ。
「もきゅ!もっきゅ!」
そして現在、筋肉痛も治り修行を再開したが――――――
「―――もきゅっ!?」
「―――――あれ?」
モップとの鬼ごっこは一瞬で終わってしまった。開始約三十秒程度でだ。
動体視力、反射神経、俊敏性、その他色々な感覚がデスパイダーとの戦闘前と比べて、圧倒的に違う。
まるで自分の体じゃないみたいだ。
戦闘民族とはいえ、たった一度の戦闘でここまで劇的に変わるものなのか?
「おーい」
俺が考えていると、リルがこちらへ向かって来る。
どうやら近くで見ていたらしい。
「兄ちゃん、今見てたけど凄いな………モップを捕まえるのはもうちょっと時間かかると思ってたけど、流石戦闘民族やな!」
リルには既に、俺が異世界転生者で戦闘民族ルビア人だということは伝えている。
リルもマグナも、千年前の勇者の時代から生きているらしいが、ルビア人の事は知らないようだった。
「う~ん、せやなぁ……よしっ」
リルは何かを思いついたように手をポンッと叩く。
「ん?何だ?何かあったのか?」
俺はリルにそう問いかける。いつの間にか俺の頭の上に移動していたモップも「もきゅ?」と言い、続く言葉を待つ。
「兄ちゃんの修行にワイとの組手も取り入れよか!」
「おおっ!いいなっ組手!」
リルとの組手か…あのリルの技とか教えてもらえるのか!
はっきり言って、デスパイダーとの戦闘では攻撃が全く効いておらず、実力不足を痛感していた。
「まずは基礎体力作りからやと思ってたけど、今の兄ちゃんなら並行してやるのが効率ええやろ」
「ああ!分かった!」
「よっしゃ!ほな昼食後にあの草原でやろか」
あの草原――――リルと最初に戦った場所か!
そして、俺の夢に出て来た紅い髪の女の子がいた場所によく似ている気がする。
「組手……ワクワクするなっ!リル、うんと厳しくやってくれ!」
俺の能天気な言葉に、前を歩いていたリルがゆっくりと振り返る。
「……ホンマに……ホンマに厳しくしてええんやな?」
リルはとても笑顔で俺にそう問いかける。普段はあまり見ない、とびっきりの笑顔で何だか怖い。
「お…おぉ……」
俺はこの時、何が待ち受けているのか知る由もなかった。
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