第8話 リトラVSデスパイダー①

 時をさかのぼること一週間前、リルの修業であるモップとの鬼ごっこの合間に、マグナの授業が入るようになった。

 マグナはまず最初に、俺達がいるこの魔の森のことを教えてくれた。

「いいですかいアニキ、この魔の森は魔素が濃過ぎて、普通の人間は入ることが出来ません」

「そういえばリルがそう言っていたな!」

「ええ、そして魔獣や魔物にとっては魔素の濃い場所ほど、居心地のいい場所となりやす」

 居心地のいい場所か、確かに人間も入ってこれないし、魔獣や魔物にとっての楽園なんだろうな。

「そして、魔素の濃度が特に高い場所がありやして、そういった所は一部の強い魔獣や魔物が縄張りにしているんですぜ!」

 リルが言っていた縄張り争いって、魔素濃度が高い場所の取り合いの事だったのか。

「ちなみに、アッシが知っている中でも特に危険な縄張りが四つありやす」

「四つもあるのか!一体どんな奴がいるんだ?」

「これはおおよその位置ですが、北のブラッドタイガー、西のジャイアントスネーク、東のデスパイダー、南のビーストキマイラ、この四体の縄張りは特に危険ですぜ!」

 そうか、恐らく俺が最初に遭遇した虎と蛇は、ブラッドタイガーとジャイアントスネークで、お互いの縄張りを広げるために争っていたんだろうな。

「そういえば、この場所は大体どの辺りになるんだ?」

「この場所ですかい?ここは大体南東の辺りで、丁度デスパイダーとビーストキマイラの間ぐらいです!」

 なるほどな、間だったらそう簡単には出会うことはなさそうか。

「いいですかいアニキ、例え縄張りに入っても戦おうとしないでくだせぇ。今のアニキじゃあ、奴らには絶対に勝てやせんぜ!」

「そいつらは、リルよりも強いのか?」

 リルも相当強いが、あれ以上に強いとなると、流石に勝てる気がしない。

 いくら戦闘民族とはいえ、まだまだ戦いの経験値が足りない。

 リルに勝ったのもマグナと二人だったし、ほとんど奇跡に近い。

「ん~どうでしょうかね?リルの旦那は最初から本気じゃなく、殺気も感じなかったので、どれ程の力を持っているのか分かんねぇです」

「そうなのか」

「ええ。恐らく、リルの旦那と同じぐらいかと」

 同じぐらいなのか。どちらにせよ、今の俺では戦っても勝ち目は無さそうだ。

「もし奴らと出会っても、逃げる事を優先してくだせぇ!命は一つだけなんだ!」

「ああ、分かった!もし出会ったら、取り敢えず逃げる事だけ考えるよ!」

 そう、この時はまさか遭遇するとは思いもしなかったんだ。

 東のデスパイダーに遭遇するなんて………

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