第7話 白兎を捕まえろ!地獄の鬼ごっこ開幕④

 俺はモップの声が聞こえる方へと向かう。

 すると、蜘蛛の巣の丁度中央辺り、大きな木のすぐ隣に小さく丸い物体がぶら下がっていた。

「もきゅ~……もきゅ~」

 やはりこの中から聞こえる声はモップの物のようだ。

「待ってろモップ…今助けてやるからな!」

 俺はそっと両手で繭を破る。

 すると、中から白い物体が飛び出して来た。

 俺は慌ててその白い物体をキャッチしたが、勢いが強かったため、尻餅をついた。

「もきゅ~もきゅもきゅ!もっきゅぅ~!」

「お、おい……くすぐったいって」

 モップは俺の胸に飛び込み、必死になってしがみついている。よっぽど怖かったのか、小さな身体は小刻みに震え、俺の胸元を涙で濡らしていく。

 そんなモップの身体を抱きしめ(少しベタついている)モップを安心させてやる。

 まったく……普段生意気なくせに、困ったもんだ…

「さぁ、帰るぞモップ!」

「もっ……きゅ………」

 俺がそう言うと、モップは顔を上げて返事をする。

 だが、何か様子がおかしい。

 口は大きく空き、俺の後ろを見てガクガクと震えだす。

 俺は恐る恐るゆっくりと後ろを振り返る。

「……な、な、なんだよあれはっ………!」

 俺の目に映ったもの、それは人の背丈を優に超す程の蜘蛛だった。

 全身は黒い体毛が生えていて、口からは鋭い牙が二本生えており、こちらを威嚇しているのか、カチッ…カチッと音を鳴らしている。

「こ、これはちょっと予想外…」

 俺の直感が告げている。こいつはヤバイ…今の俺が勝てる相手じゃない。

 そんな俺を前に、その蜘蛛はゆっくりと近づいて来る。蜘蛛の足がパキパキと落ちている木の枝を踏むたびに、俺の息は荒くなり心臓が早鐘を打つ。

(逃げないと…死ぬっ!)

 今俺の腕の中にはモップが居る。ガクガクブルブルと震え涙を流している。


 ……守らないと………俺がっ…………


 俺は歯を食いしばり、言う事を聞かない身体に無理やり力を込め、リルの住処へと走り出す。

(来た道を…全速力で……真っ直ぐにっ!)

 後ろからはバキバキと木や木の枝をへし折りながら巨大蜘蛛が追いかけて来ている。

(こんな所で………死んでたまるかぁぁぁっっ!!!)


 そして、が始まったのだ。       

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