第7話 白兎を捕まえろ!地獄の鬼ごっこ開幕①
「はぁ……はぁ………」
リルの子供であるモップを捕まえる修行が始まって、すでに一週間が過ぎていた。
「く…くそったれ……」
最初はただ捕まえるだけなら簡単だと思っていた。
だが、それは大きな間違いだった。
何故ならモップは、小さく、そしてとんでもないスピードで走り回るからだ。一度見失えば、再び探し出すのにかなりの時間を費やす。
さらに、モップは周囲の巨大な木を駆け登って行くことが出来る。
俺は今、絶賛木登り中だ。
目視で二十~三十メートル程もある木を登っており、やっと頂上が見えてきたところだ。
「もうすぐ…はぁ……もうすぐだ………」
俺の腕はもう限界に近く、プルプル震え、ミシミシと変な音も鳴っている。
「くそ…あいつ……こんなとこに登りやがって………」
思わず愚痴がこぼれてしまう。この一週間、朝から晩まで走り回り、モップを追いかけ続けているが、全然捕まらない。それどころか、あいつは夜寝る前に毎回俺の所に来ては、ニヤリと笑ってから去っていく。
……屈辱だ………舐められている…………
ていうか、あいつ本当にリルの子供なのか?最初に否定してたけど、リルは子供って言ってたし……こういう時って、現実逃避なのか分からんが、全然関係ないことを考えてしまう。
「早いとことっ捕まえて、リルに技を教えてほしいんだけど…な!?」
もうすぐ頂上だという所で、何かが俺の横を猛スピードで駆け降りて行った。
……一瞬、白い物体が見えた様な………いや、待て待て落ち着け俺。そんなはずは無い。状況を整理しよう。
まずモップがこの木を登って行くのを見た。
そして俺もそれを追いかける形で現在登っている最中だ。
もうすぐ頂上だという所で、白い何かが猛スピードで俺の横を通り過ぎる。
……つまり、そういうことだよな…そういえばもうすぐ昼ぐらいか……あいつ、食事の時間は守るタイプだったよな………
俺は下を見る。地上は遠く、遥か彼方にあるとすら思える。
「フッ…とりあえず……上まで登るか………」
俺は泣きそうになりながら、キメ顔でそう言った。
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