第6話 修行の開始と兎の師匠③

 ググゥゥグググゥゥゥゥゥッッッ!!!!!

 鼻孔をくすぐるいい匂いに反応して、俺のお腹が盛大に音を立てる。

「ガハハッ!兄ちゃん、腹減ってんのか。そりゃ、一日も寝込んでたら腹減るよな!今ちょうどマグナちゃんと昼食作ってたんや、たっぷりあるから腹いっぱい食べな」

「アニキ、元気そうで何よりですぜ!ささっどうぞこちらへ」

「ああ!」

 俺はマグナとリルの後ろについて、匂いの元の木の洞の中に入っていく。外からはあまり分からなかったが、そこには様々な調理器具と、部屋の片隅に木で作られた女性の像が二体置いてあった。

「おお…凄いな……」

 とても精巧に作られており、まるで本物の女性のようにも見えるくらい、迫力がある。

「アニキ、こっちですぜ!」

 その部屋の中央には大きな丸いテーブルが置いてある。見たところリル専用のテーブルのようだ。そのすぐ横には、一回り小さなテーブルが置いてあり、俺とマグナはそこへと着席した。

「しかし、凄いなこの場所は。この食堂もそうだし、木の中に部屋があるし、めちゃくちゃデカいし……でも、これだけデカいんなら、何で森の中で見かけなかったんだ?」

「それはですね……」

 と、そこへリルが昼食を運んで来た。

 モクモクと湯気が上っており、周りにいい匂いが充満している。

「ほらほら、話は後や。はよ食べな冷めるで!」

 リルはそう言うと、テーブルの上に皿を並べていく。

 色とりどりの野菜に、カラフルなキノコのサラダ。

 そしてメインのスープには肉も入っていて、とても美味しそうだ。

「それじゃあ、いただきます!」

 俺はまず、目の前のスープを口に運ぶ。

「…………っ!!!」

 う、美味いっ……!何だこれ………あっさりしていて、ピリピリとした辛味もある。それにこの肉、鶏肉……じゃないな。何の肉か分からんが、コリコリとした食感が面白い。

「美味いなこのスープ!食べたことない味で新鮮だ」

「そうか、それは良かった!実はそれ、ワイとマグナちゃんが作ったんや。いや~マグナちゃんが料理上手くてびっくりしたわ!」

「いや~リルの旦那には及びませんぜ!」

 マグナは照れながら、嬉しそうにしている。

 そうなのか。リルとマグナは料理が本当に美味いんだな。

 俺は続いてサラダへと手を伸ばす。色鮮やかなサラダは、キラキラと光っている。

 このカラフルなキノコ……大丈夫だよな………

 俺は野菜とキノコを一気に口の中に入れる。

「……んんっ!!何だこれ!!!」

 美味い……野菜はパリッとしていて、とても瑞々しい。キノコは松茸のような味でなんだか懐かしい。

 それから、サラダの上にかかっているドレッシングのようなもの。見た目は真っ赤で少し驚いたが、これがとても美味い。

 俺は夢中になって食べ進め、スープを五回、サラダを四回おかわりした。


「いや~食った食った!」

「あんなに食べてくれて嬉しいわ」

 食後、食器などを片付け終えた俺たちは、食堂横にある大きな切り株の上に腰かけていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る