第36話【まぼろしの郊外】


日曜の朝の風景の中には鉄塔か鉄道橋が欲しい


まぼろしの郊外で


出来ればそれに合わせた田園と運河なんかもあればいい


集合住宅のそこここにはそこに住む人たちの生活の死角があって


そういった場所はたまに悲しい出来事を引き起こす事になっている


やたらと蝿がたかった段ボールがポツンと放置されていたり


パンパンに膨れた寝袋が悪臭と共に横たわっていたりする


それはその町で比較的時間に余裕のある主婦が発見する決まりになっていて


新聞の片隅でひっそりと記事になり


すぐに風化してまたすぐに変化のない日常がはじまる


娘と父親はきちんと学校と職場を往復し


主婦は近所の主婦と連れ立ってこっそりランチに出かけたりする穏やかな日常


退屈しのぎに繰り広げられるセールスマンとの情事だって


日曜の朝だけは全て包括してただ優しく了承されるだろう


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