第35話 【瞽女さん】



真昼に闇夜を眺める瞽女たちがひっそりと往来を歩いていく


面を上げず這うように


瞽女たちがお屋敷の門前で三味線を叩く時は


日照りも風も雪も押し黙っていてくれる


まだ日のあるうちに真っ赤な瞽女唄を唄い


撥が闇夜に染まる頃には安宿の荒っぽい温もりの中にいる


列をなしての長い巡業の間


三味線を持つ腕も


行李を背負った背中も


いつしかへしゃげて


また妙なる音色に化けていくのだ


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