1月29日三題小噺【ホラー】

 お題:【海】 【雑草】 【最後のヒロイン】

 ジャンル:ホラー


 海辺から騒がしい音楽や笑い声が響く。

 パーティーピーポー略してパリピが、砂浜で酩酊状態になってはしゃぎまくっているのだ。

 そんな、パリピに突如怪異が襲い掛かって来る。


 突然一人のパリピの足首に青白の血色の悪い冷たい手がいきなり掴みかかる。

 驚いたパリピは、掴まれた足の方に視線を向けると、砂浜から1本の腕が生えている。その後ろには、同様の無数の青白い腕が砂浜に生えている光景が広がる。


 パリピは、その光景に「何このCGすごくネ!」「だれがやってんの!」「うわ、めっちゃ、リアル―!」と、テンション爆上がり。

 なんせ、パリピは大変な酩酊状態。

 無数の腕が次々とパリピたちを砂浜の中に引きずりこもうとするが、パリピが大はしゃぎするもので、中々うまくいかない。

 素早くパリピを砂浜の中に引きずりこもうとした腕は、巧みな腕の身のこなしで掴んだ酩酊パリピを激しく動かしてしまい、掴んだパリピが嘔吐。腕は大量の吐しゃ物を浴びて、たまらずパリピを放す。

 ならばと、静かにパリピに近づいてゆっくり砂浜の中に引きずり込もうとするが、パリピに動画撮影されて、SNSに拡散。それを見たパリピが夏の雑草の如く増えていき、たちまち砂浜は、パリピによって埋め尽くされた。


 腕たちは、もうお手上げ状態。パリピに逆に襲われSNSでバズるための玩具にされる。

 そんな状況に、憤慨した女の怨霊が砂浜に現れた。

 怨霊は、腕たちを使って夜の砂浜を訪れる人々を襲い続けていたのだ。


 遥か昔、怨霊がまだピチピチの生娘だった頃。

 怨霊には、ものすごく好意を寄せる貴族がいた。

 しかし、貴族に好意を寄せる女は怨霊だけではなく、その中には怨霊の家柄よりも良い家柄の者もいてライバルヒロインだらけ。

 こうして、戦わなければ生き残れない!ヒロインたちのバトルファイトが始まるのだった。

 戦って生き残った者が、最後のヒロインとして貴族と結ばれるという女の戦い。

 数々のヒロインの屍を超え、両目を失いながらもついに、最後のヒロインとなった怨霊。

 後日、貴族から逢引あいびきの誘いを受け、夜の砂浜で貴族を待っていた怨霊。

 やっと貴族と結ばれる!と、胸躍らせる怨霊。

 しかし、無念にも怨霊は太刀で切りつけられ殺されるのだった。

 目を失っていた怨霊は、切りつけてきた相手が何者かはわからなかった。

 そこで、殺人犯は現場に戻って来るという犯罪心理をサスペンス絵巻物で知っていたため、怨霊になって夜、砂浜に来た奴を襲っていれば必ず復讐は叶うと信じて今日こんにちまで、殺した者の手を使って人々を襲っていた。

 そのため、腕の本数は年々増え、比例するように怨霊も強力になっていった。

 そんな危険な砂浜には、地元に住む人は昼間でも近づかない。


 ではなぜ、怨霊のいるところにパリピがいるのか。

 勘のいい読者の皆さんはもうお気づきだろう……。


 そう、土着の神様がパリピを送り込んだのだ。

 神様は、いつまでたっても砂浜から黄泉の国に行かないばかりか、どんどん戦闘力が上がる怨霊に辟易へきえきとして。

 怨霊に対して嫌がらせとしてパリピを送ったのだった。

 リスクのあることは承知だったが、案の定パリピは大はしゃぎ、怨霊は手が出せない状態に。更にここでSNSを見た、パリピ霊媒師やパリピエクソシスト、パリピ坊主などが除霊イベントを開始。


 怨霊は、弱り果て、ついに黄泉の国へ強制送還された。

 現世を離れると怨霊の視力は数百年ぶりに戻っていた。

 周囲を見渡すと、黄泉の国の門の前では、怨霊が殺した数多あまたもの人々が列をなしている。

 その列を見たとき、怨霊は金切り声を上げ、顔を酷く歪ませた。

 列の中には、あの貴族の姿があったのだった。

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