第30話
サキは7体のクリーチャーで盾に向かって攻撃した。すると当然ながら水見はブロッカー2体でブロックしてきた。
「というわけで『団結』だ。ブロックされているクリーチャーを強化する」
強化されたことによってブロッカーよりもパワーが高くなった為、二体は破壊される。そしてブロックされていなかった5体のクリーチャーが相手の盾を全て割り切った。
『ナイス!!』
「ありがとう。これでほぼ勝ちだな」
『そうだね』
流石に二人がかりでも白と緑では10体のクリーチャーを全て処理する方法は無かったらしく、次のサキのターンで直接攻撃が普通に通った。
『やった初勝利だ!』
「良かったな」
割と一方的な展開ではあったが、初勝利は初勝利だったのでサキは普通に喜んでいた。
これは支援した甲斐があったというものだ。
『じゃあこの調子でどんどん戦っていこう!』
「ああ」
それから丁度1時間デッキを調整しつつフリーマッチに潜り続けた。
最終的には運が絡むゲームということもあり、全ての試合にて勝利を届けることは出来なかったものの、7割程度は勝利が出来たので上々な結果と言えるだろう。
『というわけで今回の配信は終了だよ!来週の土曜日は色んな配信者さんと戦うから楽しみにしていてね!』
「私たちが優勝する姿を是非生で見てくれ。分かったな?」
『じゃーねー!!!』
「またな」
初めての案件配信だったが、特に事件などは起こることもなく平和に終えられた。
のだが配信後、
『優斗さん、あのデッキは何ですか?』
とサキに怒った口調で問い詰められた。
「配信でも言った通りサキを全力で支援するデッキだが」
『二人での案件ですよ?分かってるんですか?』
「分かっているからあのデッキだぞ。主役はあくまでサキだからな。視聴者も喜んでいたじゃないか」
『視聴者さんは確かに喜んでいましたけど。主役は私だけじゃなくて私と優斗さんの二人なんですよ!』
「と言われてもな。推しを応援するのが一番私らしくないか?」
ここで突然私が主役だ!なんて言って自分だけが目立つデッキを持っていくのは違うだろう。
『そうですけど、こういうのは対等に並んで戦いたいんですよ!協力ってそういうものでしょ?もう少し自己主張する戦い方でお願いします!』
「なるほどな。悪かった、自分の事はあまり考えていなかった。なら配信までにこちらも能動的に殴れるデッキを用意する」
私が目立つかどうかも考えてくれるなんて本当にサキは良い女性だな。やはり素晴らしい。
『分かってくれましたね。なら一緒にデッキを作りましょう』
「え?」
完全に自分でデッキを作る予定だったのだが、サキも手伝ってくれるのか。
『当然ですよ。目立つデッキを使えって言って丸投げなんて。ただ文句を言ったわがままな女じゃないですか。いやここで文句を言っている時点でわがままではあるんですけど』
「いや、全然わがままじゃないぞ。サキは素晴らしくいい女性だ」
別に私が不満を持っていたり我慢をしていたりしていたわけじゃないし、何ならサキは目立てるのでこのままだった方が配信者として100%良いのに私の事を思って言ってくれているんだからな。
『ありがとうございます。じゃあ始めましょうか。とりあえずコンセプトから——』
それから大体2時間ほど2人でデッキを作成し、後日配信外でデッキに慣れるために何度かフリーマッチに潜った。
そして迎えた大会当日。私たちはPSIGAMESが用意した配信スタジオの前へとやってきていた。
「つ、ついに本番ですね……ってことはあの配信者さんたちと……」
有名配信者たちとこれから戦うからとサキが絶賛緊張中だった。
「サキも十分に有名な配信者だから大丈夫だ」
「私たちも有名ですけど、化け物しかいないんですよ……」
「化け物か?」
「そうですよ。この大会登録者数が50万を超えている人が10人も居て、その中に100万を超えている人が6人も居るんですよ!?しかもそうじゃない4人もたった1年で10万人を超えた化け物で……」
とサキはかなり焦った様子で語っていた。本当にビビっているのだろう。
「なあサキ。私も1年かからずに10万人を超えた化け物の一人だぞ」
「……確かに!!!」
「だから気にするな。いつも通りにやれば良いんだ。サキは他の配信者と比べても魅力的だ」
「ありがとうございます。緊張がほぐれてきました」
「それは良かった」
「よし、じゃあ中に入りましょう」
「そうだな」
サキの決心がついたところで私たちは建物内に入り、割り当てられていた控室へと向かった。
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