第29話

『じゃあ私の番だね』


 海底四面城の効果で全員一枚ドローした後、サキの手番が始まった。


『これとこれとこれかな』


 サキは追加で三体のクリーチャーを召喚し、前のターンに召喚していたブレイズで攻撃して終了した。手札を全て使い切ることはなかったが、かなり良い動き出しではないだろうか。


 続く水見は2MP支払って攻撃からプレイヤーを守るブロッカートークンを呼び出す

 魔法を使用した。


 普通のデッキならこんなカードを使用するわけがないので、ほぼ確実に白単の耐久デッキだ。


 延々と攻撃をしのぐブロッカーのトークンやクリーチャーを駆使して十分なMPが溜まるまで待ち、大きなアクションを起こしてとどめを刺すというのがコンセプトだ。


 こちらもサキにとっては相性が悪い。緑単の方はまだどうにかなるが、白単の方はサキのデッキを私も使っていたら迷わず降参ボタンを押してしまいそうなほどに最悪だ。


『不味くないこれ?』


 初心者のサキも流石に分かっていたらしく、困った表情を見せる。


「大丈夫だ。サキは気にせずに自分のやりたいことをすれば良い」


 だが問題ない。私が居るからな。


『流石優斗さんだね』


「ああ」


 続く二ターン目、私はカードを引いただけで何もせずに番を回す。


『優斗さん?』


「忘れたのか?相手のターン中でも使えるカードがあるって話を」


『そうだったそうだった』


 そしてしなびた鎧は先ほど手札に加えた『ラエフ』を召喚し、ターンを終了した。


「じゃあ私のターンだね。とりあえず出せるカード全部出そうかな」


『それが良い』


 サキは残る5枚の手札の内4枚を場に出した。これでサキのバトルゾーンにはクリーチャーが8体。動けるのがその内4体なので、攻撃がそのまま通ると相手の盾を5枚にまで削ることが出来る。


『で攻撃したいんだけど、ブロッカーの攻撃力が高くて破壊されちゃうんだよね……』


「それは問題ないぞ。『送還』でブロッカーを手札に戻した。トークンだから実質除去だな」


 私は『送還』を使用してブロッカーを盤面から取り除き、サキが自由に攻撃出来る状況を作った。


『ありがとう、じゃあ攻撃させてもらうね!』


 サキはそのまま直接攻撃を行い、盾を削った。


 続く水見は再びブロッカートークンを呼び出す魔法を使用し、今度は盤面に2体のブロッカーを並べた。


 そして私は再び何もせずにターンを終了した。


 次のしなびた鎧は3コスト支払って『ヒルヴォ』を召喚し、『ラエフ』でサキのクリーチャーに向かって攻撃を仕掛けた。


 パワー負けしていたのでそのまま破壊されてしまった。これで盤面に残るクリーチャーは7体。ブロッカーの数を考えると勝ちきるには1体足りない状況だ。


 だからサキは追加でクリーチャーを召喚したいところだが、このゲームには出たターンに相手を攻撃できるカードは存在しない。


 一旦サキは自分の手札にあるカードを全て出し切り、攻撃するかどうかで悩んでいた。


『一つ足りないんだよね。だから一ターン待ちたい所だけど、絶対水見さんが追加のブロッカーを沢山出してくるから攻撃しないと間に合わない。でもこのターンに二体破壊されちゃったら次間に合わないし……』


「サキが何か間違えたとしてもしっかりサポートするぞ」


『うん』


 私は悩んでいるサキにただそれだけ伝えた。


 何せ私のデッキは三色でサキを全力で支援するためだけのデッキだからな。サキがどんな選択を取っても上手くいくようにありとあらゆる支援カードを搭載している。


 その代わりに私のデッキだけで勝つ方法がデッキに1枚だけ搭載されている『ゼイス』という40枚あるデッキを味方のどちらかが全て引き切ったら勝ちというカードしか存在しない。


 しかもこれはサキの支援をしすぎてどちらかのデッキが無くなりそうな時対策に入れているだけで、基本的には勝利条件を満たせない。


 まあサキが勝つという事をコンセプトにしているので特に問題は無いがな。


『よし、決めた。攻撃するね。相手に数を減らされても多分数は足りているから次のターンに直接攻撃できるだろうし』


「分かった、じゃあ攻撃してくれ」


『オッケー』

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