第4話 進行

倒れてから4ヶ月、急激にミューズの容態は悪化した。


身体を起こすのもままならず、寝たきりの状態だ。


赤く腫れてた身体は膿を持ち、異臭もしてくる。





王太子付きの騎士となったティタンは多忙のため、なかなか訪れる事もできなくなった。


断ることも出来たが、今の地位では出来ることも限られている。


ただの伯爵令息よりは、王太子付きの護衛騎士の方が幅広く活動できるし、権力も持てる。


様々な知り合いも増え相談するが、依然と手掛かりは見つからない。




治療法も、犯人も見つける事が出来ず、時間がだけが過ぎる。


焦燥と苛立ちが募り始めていた。


「ミューズ…」

久しぶりに会えても会話は少ない。


体力の消耗も激しく、医師からも長い時間の面会は禁止されてるのだ。


それでも側に居られれば、ティタンは幸せだった。


何があっても、最期の時まで一緒に居たいと思ったのはミューズだけだ。





「ティタン…もしも私が死んだら、良い人を見つけてね。私に遠慮しなくていいのよ」

(こんな事ばかりをミューズに言わせて…俺はなんて不甲斐ないんだ)



荒い呼吸の中そう伝えるミューズに、首を横に降る。


「馬鹿なことを言うな、そんな事俺がするはずがないだろ」


優しく手を握り、安心させたいが為に頬に触れる。

腫れていた顔は今度は痩せ細り色を失っていた。


零れそうになる涙を懸命にこらえる。


ミューズの手を握り、目を閉じ、しばし沈黙が流れた。




沈黙を破ったのはミューズだ。


「ティタン、あのね」

ミューズは意を決したように考えていた憶測を、ティタンに打ち明けていく。






――この症状は呪いなのではないかと。


ずっと毒物や病気を疑っていたが、これはそういうのとは違い、呪力によるものでは?


医師が懸命に治療したり、診察していても見つからない。

なのであればこの国ではあまり馴染みのない呪いの力が怪しいと。




魔法は盛んだが、この国では呪術師はいない。

いたとしても表だって見ることはなく、全く考えていなかった。


それくらい馴染みがないものだった。


「もしも呪いであれば、祓えれば私は助かるかもしれない…」

その言葉を聞き、ぱっとティタンの表情が明るくなる。





博識な彼女が出した答えだ、きっと合っているに違いない。


重ねる手に力をこめ、誓うように言葉にする。




「待っててくれミューズ、必ず探してくるから」

一縷の望みに掛けるしかなかった。

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