後日談

 岸に一人の少女が座っている。空は夕焼けとも朝焼けともとれるあいまいな空模様だ。と、水辺から一つの瓶が流れてくる。少女は立ち上がり、水の中にザブザブと入ってそれを取りに行った。まるで、自分のものだとわかっているかのように。彼女の服は一切濡れた様子を見せずにきれいな状態で少女と共に陸に上がった。靴は履いておらず、とても色白で、華奢な足が血の付いた真っ白なワンピースを不思議と可憐に見せる。

 少女は瓶の蓋を抜き、中を逆さまにする。半分くらいまで入水したであろう海水と、耐水性の紙が一枚、はらりと落下した。彼女は紙を拾い上げ、そこに書いてある文章を黙読し小さく笑い、黒い長髪の間から涙を流した。数分間その手紙を読み返していた彼女は裾をパンパンとはたき、水辺とは反対方向の、一つだけの道を歩いていく。まるで希望を見つけたかのような明るい顔で。

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死にゆくものから誰か様へ 小雨(こあめ、小飴) @coame_syousetu

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