第4話 夢を失った日と涙

〜〜〜〜〜


驚愕しているお兄ちゃんを真っ直ぐに見据える。

そして数秒だけ考える。

やはり私は.....お兄ちゃんに照れ隠しの意味でやっていたんだな、と思う。


2年近く冷たかったのは、だ。

はっきりした気がする。

お兄ちゃんが.....コンド○ムを部屋に置いてくれたお陰で、だ。


「ど、どうしたんだ。カノン」


「お兄ちゃん。私って冷酷だよね」


「.....そ、そうとも言えるが.....」


「.....うん。ゴメンね。それには理由があるの。今は話せないけど」


私はそう言いながら言い淀む。

どうしてもこの気持ちを伝えるには何か足りない。

だからこれだけは知っておいてほしいと思った。

貴方に対して嫌で接したりしていた訳じゃ無い事を。


「.....そうか。まあカノンも大変だろ。.....父親を病で亡くしているしな」


「それは関係無いけど.....でも。そうなのかもね」


私のお父さんは珍しい癌で亡くなった。

スキルス胃癌という途轍もなく悪性の癌だが.....。

気が付いた時は余命3ヶ月だった。


そして1年が過ぎた頃。

お父さんは亡くなってしまった。

そんなお父さんが大好きだったから。


「.....カノン?」


「.....え。あれ」


涙が溢れてきた。

私は涙を袖で拭くが.....涙が止まらない。

慌てながら私は袖で何回も涙を拭うと。

お兄ちゃんが抱き締めてきた。


「落ち着け。大丈夫。お前の言いたい事は分かったから」


「.....でも.....私は.....」


「まあまあ。お前の笑った顔が好きだからな」


「.....」


そうやって私を誘惑する。

だから私は.....助けてくれた貴方を好きになった。

心の底から大好きになったのだ。

いつからだろうか。

お兄ちゃんとこうして居たいと思ったのは。


「ソーキそばでも食べないか。昼飯に」


「もしかして由依さん?」


「そうだな。アイツの特製だそうだ。全くな。変な所で才能あるよなアイツ」


「ふふっ」


「.....?.....おう。やっと笑ったか」


私はお兄ちゃんから離れながら笑みを浮かべる。

そして、私ね。お兄ちゃんにこの事だけは理解して欲しかったから。良いきっかけになったと思う。コ○ドーム.....が、と言う。

お兄ちゃんは、なぁ!?、と真っ赤になる。

貴方が置いた癖に。


「もう忘れてくれ。そのブツの件はすまなかった」


「でも不思議だよね。そんなえっちなもので兄妹の縁がまた繋がるなんて」


「まあ確かにな.....恥ずかしいとしか言いようが無い」


だけど私はそのお陰でもう一つ.....判明した事がある。

それは.....私が究極にエッチだと言う事.....だ。

とてもお兄ちゃんとセッ○スしたい気分でもある。

私はまた下着が滑る感触を感じながら。

慌てて別の事を考える。


「その。由依さんとはどんな感じ?」


「どんな感じもクソも無いかもな。.....相変わらず、はいさーい、と言ってる」


「そうなんだね。アハハ」


「相変わらずすぎてな。全くだ」


「.....でもそういう関係.....羨ましいな。昔からのお兄ちゃんを知っているって事だしね」


それはどういう意味だ?、と聞いてくるお兄ちゃん。

私はハッとしながら赤くなる。

それから俯く。

な、何でもないよ、と慌てた。

私はそれから、さ。ご飯ご飯、と言いながらお兄ちゃんの背中を押す。


「オイオイ。押すなよ」


「良いから。早く行こう」


「ったく」


私は照れ隠しの意味でお兄ちゃんの背中を押す。

それから歩き出した。

お兄ちゃんは慌てながらも聞かないでくれる。

恥ずかしいし.....良かった。


「お兄ちゃん。大好き」


「.....え?何か言ったか?小さいぞ声が」


「何でもない。お兄ちゃんのバカって言ったの」


「.....???」


それから私は笑みを浮かべながら台所に向かってから。

そのまま貰ったというソーキそばを作り始める。

しかしよく考えてみたが。

ソーキそばは初めて作るかもしれない。

考えながら悩んでいると。


「手伝うよ」


「お兄ちゃん。有難う」


そう言ってお兄ちゃんは私を見てくる。

私はドキッとした。

つい目を逸らしてしまう。

心臓がドキドキする。

恥ずかしいんだけど.....何だか昔より意識し始めたな私。


「どうした?何か熱でもあるのか?」


「な、何でもない!!!!!」


「???」


私は慌てながらソーキそばを持ったが。

素材をバラバラと床に散らかした。

私は慌てて拾う。


お兄ちゃんも拾ってくれた。

恥ずかしいものだ。

動揺している.....完全に。

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