10月26日 1

 尾咲学園おざきがくえんは尾咲市の中心に位置する山の頂上にある。山のふもとから頂上に向かって、歩行者用と自動車用の道が東西南から計6つ伸びている。

 山のふもとは東西に住宅街が広がっており、南部は飲食店や娯楽施設が多く展開されている。

 日本一の進学校がある都市として土地開発にも余念がなく、尾咲市の南部は常に人が溢れとても活気がある。

 その積極的な開拓精神のたまものか、高層マンションを建てる計画がまことしやかに囁かれている。

 最近改装された巨大な駅のロータリーには学園へと向かうバスが駐車され市外から通学する生徒を迎え入れる。

 更に駅に併設されている商業施設には海外産のテナントが日本で初めて入ったとされ、日夜街の経済を潤している。


 元来尾咲市は日本の中心に位置する限界集落だった。神聖な山を崇めるように、そのふもとに家が点在しているだけのこじんまりとした山村。村の住民は少なく全員が自給自足の生活をしていて、そのほとんどが農業で生計を立てている貧しい家だった。贅沢な暮らしなど期待できないが、お互いが助け合って生きていた。


 山間での暮らしが脅かされたのは突然だった。日本に住むとある富豪一族の出資で、学園建設を基盤とした都市開発計画が起きる。

 候補として選ばれたのが限界集落の尾咲。穏やかな日々が流れていた村落には場違いな重機が入り、崇められていた神聖な山は土地が削られ整備されていく。

 同時に山のふもとにもメスが入り最新設備の住宅や近代的な商業施設が作られた。インフラの整備も進められていく。中心の山から地続きになっている北部を除いて、尾咲市は日本を代表する都市に様変わりしたのであった。


 尾咲市の北部は人の手が加えられていない。人が立ち入れぬよう侵入禁止措置が施されているだけだ。北部の山にはキャンプ場やアスレチックが入る予定だったが、開発を断念したらしい。

「北部に立ち入った人間はそのことごとくが行方不明、あるいいは意思の疎通が困難な状態で発見される。まるで神隠しや呪いの類だな」

 これはいいネタになる、と友人の丸腰が呟く。

「ネタになるって何がだよ。学園の代表や地主一族でもゆするつもりか?」

「どう考えても徒労に終わる発言はよしてくれしゅう、このタイミングに提案するってことは目的は一つしかないだろう。文化祭の発表だ」


 尾咲学園は現在文化祭を目前としている。そのためか学園内は大変活気がある。進学校で勉学に励む優等生たちも珍しく浮き足立って準備を進めている。

 この時期の各教室は文化祭の出し物に則って装飾されている。巨大な暗幕で窓を覆っている教室には赤いペンキで塗りつぶされた新聞紙や変装のためのマスクが点在している。

 縁日を出し物にしてる教室では生徒の浴衣や甚平がロッカーの上に並び、射的やボールすくいを模した段ボール製の屋台が鎮座している。小さな御神輿おみこしや提灯も作ろうというのだから本格的である。

 出し物の中にはフォトスポットなる変わり種もある。これら文化祭の熱量は教室だけでなく廊下にまで伝播している。大理石の床の上には装飾のための紙片やビニール片が散らばっていて掃除が間に合っていない。

 廊下の壁にはポスターや紙でできたリースが貼り付けられている。

 天井からは、星やらハートやらが糸で繋がった名前もよくわからないインテリアが吊るされている。

 渡り廊下には垂れ幕が、学園の校門や昇降口には巨大なお手製ゲートが設置されていた。

 尾咲学園は文字通りお祭りモード真っ最中である。蒐が所属する教室でも『性逆転クラシックメイド書道占い喫茶』というニッチなジャンルを詰め込んだ出し物が決まっている。

 すでにメイド服に身を包むことが半ば強引に約束されているため、文化祭当日は本気で休もうと考えていたところだった。


「文化祭の発表って……確かに所属するクラスだけでなく部活動や同好会も何らかの発表をしてもいいとは言われてるけどさ、尾咲市の発展を資料にでもまとめて展示するって? そんなの学園の生徒や一般の来客が見に来るか?」

「確かに蒐の言うことには一理ある。だが俺の言うことは百理あるぞ。というか俺からしたらお前の言うことは理解の外だ。確かに俺はこの街の歴史に注目しているが、発展の経緯なんざどうだっていいし来客なんぞも期待していない。学園の外れの旧校舎にあるオカルト研究会なんて怪しい団体なんぞに顔を出す人はいない。繁盛の当てがないこともないけどな。だが俺が大事にしてるのはそこじゃない。禁忌きんきの山だ。俺は学園の北、尾咲市の北部に位置する立ち入り禁止の山が気になる」

 丸腰は北の山を話題に挙げた。学園内で北の山は禁忌の山と呼ばれている。校則で接近禁止進入禁止とされており、過去に興味本位で立ち入った男子生徒は丸二日行方不明、どういう経緯か見つかったはいいものの、意思の疎通が困難なほど精神に異常をきたした。今も病院に入院している。

 男子生徒は何かにおびえているようだったと云う。

 その事件の後、学園から地続きとなっている禁忌の山は、その入り口が高い塀で囲まれ閉鎖された。塀の扉には硬い鎖と南京錠。鍵は学園長と尾咲市の地主が管理している。


「気になるって……その好奇心を否定はしないけど、調べる方法がないだろう。禁忌の山に入るなんて問題外だし、尾咲の歴史については一切の資料や書物が残されていないんだ。何をどこから手を付ける、というか文化祭まであと二日だぞ、調べるにしても間に合うはずないだろ」

 部活動や同好会の出し物は必須ではない。勧誘という点でいえば、文化祭は活動内容や雰囲気を多くの生徒に知ってもらう絶好の機会だと思うが、オカルト研究会に広いコミュニティは求めていない。

 文化部である以上、文化祭というイベントは最も力を入れるべきなのだろうが、狭くニッチなジャンルを活動の軸としているこちらは人目につくことは極力避けたいのだ。

 

「そこはあれだ、我がオカルト研究会には学年のアイドルがいるだろう? 彼女が客を呼び込み、ほいほい釣られた客に禁忌の山についてまとめた資料を見せる。何だかんだみんな興味あるだろうし、見てくれると思うぜ。仮に間に合わなくても彼女が平謝りをすればきっとみんな許してくれるさ、それで万事解決。なにせ問題すら起こらないからな」

「万事解決って……文化祭当日の彼女の負担がでかすぎるだろう。クラスの出し物だってあるんだぞ。それにいくら彼女の力があろうが、学園のはずれの旧校舎にあるオカルト研究会なんて云う、奇怪な集まりに誰が来てくれるんだよ、というか存在すら知られてないよ」


 オカルト研究会は学園の裏、校舎から少し離れた場所に残された旧校舎の中にある。旧校舎という名前がついているが、そこまで設備が古いわけではない。まだ十二分に使える施設ではあるが、数年前に学園の大規模改修で今の校舎が建てられたきり、使われることがなくなった。

 そもそも学園には校舎が三つ、それとは別に文化部のための部室棟まで用意されている。部室棟には部に上がる前の同好会も入ることができるのだが、オカルト研究会は旧校舎を利用している。

 そもそもオカルト研究会も学園にある同好会のうちの一つなのだが、学園側からしたら特例ならぬ非公式扱いされている。

 理由は単純で、活動内容が不明瞭であること、顧問を引き受ける教師が見つかっていないことが挙げられる。

 これが漫画研究会やらアニメ研究会であれば、そのジャンルを研究討論するなどして活動ができる。しかしオカルトというジャンルは研究対象が非現実的すぎて、活動指針さえ定めることが難しい。そもそも活動内容が適切なものかもわからない。

 その為、進学校である尾咲学園にふさわしくないという理由も含め同好会申請が通らなかった。

 しかし一応、三人の同好会員が揃ってしまっている。

 旧校舎を利用すること、部費は出さないこと、活動内容を報告すること、危険行為をしないことを理由に非公式で認められた。非公式のため他の生徒には口外しないこともダメ押しされた。


「やはりそこが問題だよなあ、まずもってこの旧校舎はでかすぎて広すぎる、正直手持無沙汰だ。しかも校舎からは見えないような立地ときた。おまけに電気と水が通っていない。冷暖房が使えないことに加えトイレすら機能しない」

 直近の問題は文化祭よりもこの旧校舎なのだ。近々取り壊されるという噂もある。

「しかし逆にチャンスだと思うぜ俺は。ここでしっかりと文化祭のために活動をしていたという証拠を残す。しかもその内容がこの街の歴史についてであれば、教師たちも納得するしかないだろう。めでたく非公式から公式にレベルアップ。この旧校舎からもおさらばできる」

「その調べようとしている歴史が、触れてはいけないとされる禁忌の山の時点で、お前の提案は根本から間違っているんだよ。何なら首の皮一枚でつながっているこの同好会が、お前の思い付きの行動で無くなることになる。巣南さんが泣くぞ」

「いいや、あの女の原動力は違うところにある。この非公式の同好会が無くなろうが問題ないさ。だがまあ、この同好会を作ったお前の為なら、彼女は同好会を存続させるために奔走するだろうがな」


 きっぱり切り捨てるように言った後、ところで噂のマドンナは何処に行ったんだ?と丸腰は続ける。 

「俺のためって、どういうことだよ。だけど確かにちょっと遅いな。今日の授業が終わった後に『いいことを思いついたわ、先に行ってて』って言われたけど、そろそろ日が暮れるぞ」


 先述した通り旧校舎は水と電気が通っていない。日が暮れてしまえば視界は暗くなり、まともに動けなくなる。必然的に、活動は終了となる。今は秋。日は短い。そろそろ日が暮れる時間だ。

「蒐、どうするよ? せっかくいい案が思い浮かんだんだ。文化祭までに使える時間は今日と明日しかない。俺はすぐにでも禁忌の山について調べたいんだが」

 すきま風が冷たくなってきた。窓の外に視線を移す。紅葉は美しい軌道を描いて散っている。深紅に染まった夕日を浴びて蒐の影はそのシルエットを伸ばしている。まるで違う世界に迷い込んだみたいだった。夕方、夜の入り口は何時も気が張ってしまう。油断すると、この世ならざる怪異が見えてしまう。夜は彼らの時間なのだから。


「先に行っててと言われたからね、巣南すなんさんが来るまでは待ってるよ」

「そうかい、じゃあ俺は先に失礼するぜ」


 丸腰はそのまま部室を後にした。どうやって禁忌の山について調べるかはわからないが、厳重に施錠されている山に入ることは不可能だ。寮生であるため時間帯的にも街に降りることはできない。往復だけで門限を過ぎてしまう。恐らく学園の図書館にある資料の山から、尾咲市の歴史が記述されたモノを虱潰しらみつぶしに探していくのだろう。

 

 寄名蒐よりなしゅう怪異かいいが見える体質は治っていない。幼少期の出来事から今日に至るまで、怪異は視えたままだ。 名前を知らないあのお医者さんに言いつけられた通り、ひたすら無視を続けた。

 しかし一口に無視をするといっても簡単ではない。寝ているとき以外は常に身構えて気を張っている状態だった。不意に怪異が現れた時は挙動不審になってしまう時もあった。そのおぞましさに、吐き気がこみあげてくるような怪異も見てきた。

 周りの人たちからはおかしな子供といわれた。友達はできなかった。できるだけ周りに迷惑をかけないように過ごしてきた。

 この学園に入るまで、まともな生活が出来た試しがない。何かに集中していないと怪異を意識してしまう。集中力を途切れさせないために、勉強や読書を好むようになった。おかげで日本一の進学校に進学することができた。

 もしかすると尾咲学園に入学できたことが人生で最初の幸福な出来事かもしれない。さらに続けて転機が訪れた。中学を卒業する頃、怪異の気配が分かるようになった。

 視界の外にいる怪異が、おおよそ何処にいるかわかるようになったのだ。霊を視覚的に捉えるかを意識的に切り替えられるようにもなった。視たいときに視る、視ないときは視ないの選択ができるようになったのである。

 お医者さんが言っていた俯瞰ふかんして視る、というのがこれに該当するだろう。怪異限定ではあるが、気配察知、俯瞰視点という二つの能力を得て、初めて人並みの生活が送れるようになったのだ。そして寄名蒐は尾咲学園に入学する。


 友達という関係性が純粋にわからない蒐が、高校デビューという言葉を知るはずもなく、知っていたとしても挑戦する勇気もない。

 何処か浮かれた雰囲気の新入生達を横目に見ることしかできなかった。対照的に非日常の中で生きてきた蒐は達観した雰囲気を纏っている。

 入学式のオリエンテーリングでは、自己紹介を淡々と済ませ、これから共に過ごす学友たちとも当たり障りのない会話をした。

 そのまま学園や寮での生活方法の説明を受け、授業で使う教材の配布等が事務的に進み、入学初日を終えた。有頂天だった入学前の気分とは裏腹に、入学後は呆気ないものだと実感したのだった。


 入学してから数日が経った頃、いつの間にかよく話すようになった丸腰から禁忌の山の噂を聞いた。神隠しの山、入ると身体を弄ばれる等々、悪い実績と二つ名が多数ある山という話だった。

 禁忌の山という名前だということは知らなかったが、入学式のオリエンテーションで立ち入り禁止の説明を受けていたこともあり、学園の裏山が厳重に施錠されていることは知っていた。触らぬ神に祟りなし、危険なものに近づく理由などない。自分には無関係の話だと思っていた。


 だが、それは唐突だった。禁忌の山と呼ばれる場所から怪異の気配を感じた。今まで経験したことのない異質で重々しいモノ。地球の重力が一層強くなった感じがした。周囲の温度が低くなったと錯覚する。脊髄せきずいごと背骨が引き抜かれるような感覚。恐怖と理解不能な怪異の質量を感じて汗が止まらなくなった。これは明らかに異質だ。そもそも今までは怪異の気配は視野で捉える範囲からしか感じたことがなかった。ましてや、怪異を捉えることで身体に重みが伸し掛かることもなかった。


 しかし今、の怪異の重さに押しつぶされそうになっている。


 やがて気配は消え、全身に感じていた重みは消え去った。初めて怪異を認識した時以来の恐怖だった。間違いなく、禁忌の山には怪異が住んでいる。そう確信した。あのお医者さんが言っていた対処法が通じないほどの特異性を持った怪異。嫌な予感は消えなかった。こうして蒐の穏やかな高校生活は終わりを告げ、波乱の幕開けとなる。オカルト研究会はあくまでも、怪異が視える自分が、禁忌の山を調査するために設立した。あの危険な山に丸腰を近づけさせるわけにはいかない。


「あれ、丸腰君は何処に行っちゃったの?」

 蒐が思いふけっていたのも束の間、オカルト研究会の紅一点である巣南瑞穂が疑問文を投げながら部室に入ってきた。その両手には何かを買ってきたのだろう、ビニール袋が握られている。彼女はそのまま部室の真ん中に足を進め、靴を脱いで座敷に上がった。


 オカルト研究会の部室は変わったつくりをしている。広さにして約十畳。日当たりのいい南向きの部屋で北側に扉がある。南側四畳半は小上がり座敷となっていて、真ん中にちゃぶ台が一台鎮座している。残る北側は長机とパイプ椅子があり、部室の隅にはカセットコンロと湯呑といった給仕道具と資料を収納する本棚が置いてある。

 ちなみに給仕道具はほぼ使っていない。


「せっかく良い考えが浮かんだから、部員全員に伝えたかったのに」

 ちゃぶ台の上にビニール袋を置きながら巣南はつぶやく。急いで来たのだろう、彼女は少し息が上がっていた。彼女の綺麗な横顔が夕日を浴びて赤く染まる。汗で濡れた艶のある黒髪が額や首筋に張り付いていた。

「丸腰はもう待てないとか行って出てったぞ、相変わらずせっかちな奴だよまったく。活動の終わりの時間が近いってのもあったけどな。あと、巣南さんはタオルくらい持ってないのか? もう日が暮れてすぐに寒くなる。そのままだと風邪引くぞ」

「心配してくれるの? その気持ちはとても嬉しいわ、ありがとう。けど大丈夫よ、こう見えても身体は丈夫なの。昔から病気になったことはないし、そもそもそんな余裕すらなかったわ」

 そろそろ敬称を付けるのはやめてよ、と巣南は言った。ぶっきらぼうに喋るくせに敬称を付けられると拍子抜けして対抗意識が削がれるらしい。肩透かしを食らうともいう。

「それで、いいことって何なんだ、そのビニール袋と関係してるのか」

「もちろんよ、すっごく重たかったんだから。サプライズなんて慣れないことはせずに、荷物持ちを頼めばよかったわ。汗もかいちゃったし最悪ね。あ、経費は出世払いでいいから」

 巣南はそのままちゃぶ台の上にビニール袋の中身を取り出す。大中小様々な長さと大きさの蝋燭ろうそく、時代物を模した安物の燭台しょくだいが多数、小さい行灯あんどんまであった。火をつけるための大量のマッチも用意してあり抜かりはない様子だった。

「そもそも電気が通ってないから、明りのために火を使うのは当たり前よね、引火予防のための水も、古臭い茶碗にでも入れてたくさん用意してあれば世界観は壊れないわ。窓は暗幕を使えばいい。長机とパイプ椅子は景観に合わないから外に出しておきましょう。できれば本棚も移動させたいわ。屏風びょうぶなんかの和家具も欲しいけど、贅沢は言えないわね。でもせっかく畳がある部室なのだから、雰囲気作りは完璧にしたいわ」

 巣南は蝋燭を取り出した後、部室内を見まわし次々と提案していく。こちらは何を言っているのかさっぱりだ。逆光で表情すらわからない。

「巣南さん、申し訳ないのだけど、何の話をしているのか見当がつかない。順を追って分かるように言ってくれないか」

「何を話してるのか見当がつかないって……このタイミングに提案するってことは目的は一つしかないでしょう。文化祭の発表よ」

 内容の方向性は違うようだが、丸腰とまったく同じことを言っている。

「巣南さんまで文化祭の出し物を考えていたのか、それでその大量に買ってきた備品で何をやろうとお考えで?」

「棘のある言い方はしないで、これでもオカルト研究会という要素を最大限に生かした催しを考えたんだから。文化祭当日に話題になれば公式な同好会になれるわ。この不便な旧校舎ともおさらばよ」

 示し合わせたかのように丸腰と似たようなことを言う。もしかしたらお似合いの二人なのではないだろうか。

「寄名君、変なことを考えてない?」

 彼女は察しがいいようだった。

「まあいいわ、私の買ってきた大量のキャンドルを見ればわかるでしょう? いいえ、この場合は蝋燭といったほうがいいわね。これらを使って今日と明日で部室内を装飾します。足りないものがあれば都度調達します。そして、文化祭当日は百物語を決行します。非公式なので許可も必要ありません。強行します」

 夕日が差し込む窓を背にして彼女は宣言した。美しい彼女は、蒐には後光がさして見える。恐らく自信満々であろうその表情は、残念ながら先ほどからの逆光で見えないままだった。けがれを知らない綺麗な瞳だけがとても輝いていた。

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