おじの十戒
「おじ、許して😭」
おじとコラボ配信中のおばぶは、おじから拒絶され――涙を流していた。
おじとおばぶは、その価値観の違いから定期的に喧嘩をしているが、ついにそれが3回目に達した時、おじはおばぶに対し絶交を突きつけたのだ。
「おばぶ。もうおじ達別れようや。おじの言う事、何回言ったらわかるねん」
「なんでそんなばぶを突き放すようなこと言うの! ばぶはおじから言われた大切なことはメモしてるし、こうやって話し合って理解しようとしてるじゃん!」
「イヤッおじの言う事全然伝わってへんやん! じゃあ、わかったわ!」
その時、おじは何か良い案を思いついたとばかりに顔を上げた。
「どうするの? おじ」
「おじの十戒を授けるで。お前らメモれメモれ」
そしておもむろにおじは、おじの十戒と称した文を読み上げた。
1.おじと家族のように接してはならない
2.オマエラヤンをみだりに褒めてはならない
3.絶対におじを誹謗中傷をしてはいけない
4.仕事に情熱を注ぐこと
5.父母を敬うこと
6.匿名であってはいけない
7.目には膝を、歯には膝を
8.オマエラヤンと仲良くしてはいけない
9.人を傷つける嘘をついてはならない
10.人々を笑顔にすること
「お前らおじの十戒破ったら膝やからな。守れるか?」
「うん……。膝がすごい大事なんやね」
「膝は例えや。おじが言いたいのは、やり返しはありっちゅうことやねん」
「おじが言いたいこと理解したよ。おじは徳を積みたいんだね……」
おばぶはようやく――おじの伝えたかったことを理解してくれたようだった。
「これ破ったら今度こそ本当に破門やで」
「わかった。守るよ。だって、ばぶとおじは家族だもん」
おばぶのその言葉で、おじもようやく満足したようだった。
リスナーからは温かい拍手が上がり、2人の関係は修復されたかのように思われた。
***
「なんやねんこれ! やっぱ分かってないやんけ!」
おじの配信終了後、おじがTwitterを見ていると、おばぶが投稿した一つのツイートが目についた。
おばぶ:
『おじは膝を神格化してるけど、膝で人間が救われたわけじゃない。
自分と向き合って変わろうと思ってた人が、たまたまおじの膝食らって合い改心に向かっただけや。
反抗期があった方が人は健常に大人になるとかいうやろ。ヤン期は必要ゃ』
おじはこのツイートを見て、再びキレ始めてしまった。
「ヤンは加害者でおじは被害者やろ! なんで加害者側の肩を持つねん!」
プルルルル! その時、おじのスマホに電話がかかってきた。画面を見るとそこには非通知と表示されている。
おじが電話に出ようと手を伸ばした瞬間――、
おじの部屋の窓を突き破って覆面を付けた複数の男達が突入してきた。
「うわっ! 誰やお前ら!」
おじは驚き逃げようとするが、不意打ちで複数人に囲まれてはさすがに何も抵抗することができなかった。
男たちは、素早くおじを制圧し、部屋は再び静寂を取り戻す。
おじの目の前に立った男は一呼吸置くと、静かに語り始めた。
「俺たちは、"おじ被害者の会"の人間だ」
「何やねんそれ! おじは生まれてから一度も加害者になったことなんてないで!?」
「誹謗中傷、恫喝、詐欺、etc……ネットの子らでおじの被害にあった者たちは多い」
「それオマエラヤン!」
おじはそういう悪いことをするのはお前らだと――抗議の意志を見せたが、男たちはそうは捉えなかったようだ。
「あぁ、俺らがおじの被害者だと認めるんだな?」
「チャウチャウ! この状況見て! おじは被害者やろどう見ても!」
おじ被害者の会の人達は――やれやれ、わかってないなという感じでため息をつくと、おじに残酷な真実を突きつけた。
「『やり返しはあり』なんだよ」
BAD END
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