おじご奉仕練習

「お前ら、彼女の作り方教えたろか?」


ある日おじは『彼女の作り方』という部屋名でチャット部屋を立てていた。


チャット上では――『彼女いないおじに彼女の作り方聞いても意味ないだろ』ともっともらしい意見が出ていた。しかしそれに対しおじは臆すことなく、


「イヤッ! 免許合宿で女に押しかけられた話したやろ。おじは彼女作ろうと思えばいつでも作れるねん」


と自信満々に断言した。

もうそれ20回以上聞いてるよ――という古参の反応をよそにおじは続ける、


「モテないお前らに彼女の作り方教えたるわ。彼女を作るのは簡単やねん。乳首を責めればエエ」


おじの突然の変態発言に対しチャットのみんなは、

『うわ』『きも』『変態膝眼鏡へんたいひざめがね

とおじがついに変態おじさんに身を落としたことを嘆いていた。


「チャウネン! おじは性欲とか一切ないで? これはご奉仕ヤネン!」


……と、おじは必死に弁解する。


「おじは責められる側だろ」


そこに、ochaが鋭いツッコミを入れた。


「せやねん!おじが欲しかったツッコミはそれやねん。ochaが1番理解してるわ」


つまり乳首を責められたら彼女もできるってこと?とチャット上で疑問が上がった。


「そうや。おばぶもおじの乳首を責めれたら嬉しいやろ?」

「え……」


おじはおばぶにご奉仕と称した変態行為を行うことを――ずっと楽しみにしていたのだ。


「ごめんおじ……さすがにないわ……」

「なんでやねん! 今までおばぶから散々誘ってきたやん! これは罠や! 美人局つつもたせや!」


確かにおばぶはこれまでおじを誘惑していた。しかしおばぶが好きだったのは、女に誘惑されても流されない気高いおじの姿だったのだ。


「ばぶはこう見えて奥手だからな? 普通に初対面の男性とそういうことするのは怖いわ」

「おじは怖くあらへん。あんだけ良くしてやったんやからおじに恩を返そうや」


いまこそ精算の時だ――と言わんばかりにおじはおばぶに詰め寄った。


「おじと個室で2人きりは怖いよ!」


おじはおばぶの意見を真摯に受け止め、悩むような素振りを見せると一つの結論を導き出した。


「おばぶがそんな怖い言うならわかったわ。じゃあ先に八に試してもらおや」

「え?」

「八におじの乳首責めてもらって問題なければ、おばぶも安心やろ」


おじの意味不明な提案に、


『巻き込まれる八が可哀想』『八がOKするわけないだろ』『いや八は意外に身内からの頼みに弱いかも』


とみんなは困惑した。しかし意外なことにおばぶは、


「それは名案かも! じゃあ八にメッセージ送っていい?」


とノリノリで意見を受け入れた。その後おじから了承を得たおばぶは、八にディスコで連絡を送ったのだった。


「OKだって!」

「よっしゃ。じゃあ今度おじばぶ八の3人で、なんかごっつええ感じのイタリアンレストラン行こうや」



***



それから2週間後。

この日、ついにおじは初めておばぶとリアルで顔を合わせる事となったのだ。

おじはその様子をスマホで配信してくれていた。


3人はレストラン内の個室で初めて挨拶をする。


「おじとは何度か会ってますが、おばぶさん初めまして。八です」

「おじやで」

「おばぶです」


レストランでは食事をしながら、今後の方針の話し合いとなった。


「まず八におじに乳首を責めてもらう。おばぶがそれを見て恐怖を覚えなかったら、おばぶにもおじの乳首責めてもらいたい。ええか?」

「うーん……」


おばぶは見るからに迷っていた。


「おばぶ!お願いや!」


とおじが懇願するように頼み込んだかいあってか、おばぶは渋々と


「……まあ仕方ないか」


と承諾した。そしておじはスマートフォンを壁に設置し、この個室での様子がよく見えるようにした。


「じゃあいくで?」


おじはそういうと席から立ち上がって、おもむろに上着を脱いだ。


「マジでやるのかおじ」

「おじは本気やで」


八は、恐る恐るおじの胸元に手を近づけそっと指でおじの乳首に触れた。


「ンアーッ!(≧д≦)」


その瞬間、おじの咆哮が――いい雰囲気のレストラン全体に響き渡った。


「お客様、いかがいたしましたか――」


おじの大声を聞きつけ、個室のふすまを開けた女性店員が恐怖で凍りついた。

上半身裸のおじは入ってきた女性店員と目が会い、申し訳無さそうな表情を浮かべると、弁明を始める。


「……イヤッ、チャウネン。これはご奉仕の練習で、決してやましい事をしてるわけでは――」

「キャァァァァ!!!!」


店員は悲鳴を上げて逃げていった。


その後、店の偉い人がやってきて、おじは出禁にされました。


BAD END

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