頂き女子に頂かれるおじ

おじはこれまでデュラチャ上で長らく彼女募集をしていた。


しかし、

・おじの発言は独特で女子ウケが悪い

・おじの周囲には危険人物が多く集まっている

・彼女候補がやたらと多い


以上の理由から、これまでおじと本気で付き合おうと言い出す女子の気配など一切無かったのだ。


ところが最近その状況が一変したらしい。


「とうとうおじにも彼女ができたやで。いやあ長かった」


なんとあのおじに彼女ができたらしいのだ。


「彼女ってどこの誰なん?」


ミャオチョフがおじに最もな質問を投げかけた。


「最近デュラチャに来た子やで。よよちゃんいう子や」


「あのちょっと変なテンションの人か」


デュラチャは狭い界隈なので、変なテンションで自撮りを晒す女性がいればすぐに噂になる。


「失礼なこと言わんときい。あの子を馬鹿にするやつは許さん」


おじが自分以外の誰かを庇うなんてことはあり得ないことだったのでミャオチョフは驚いた。


「なんでそんなにその人のこと庇うん?」


「よよちゃんはな、今まで大変な人生を送ってきたんや」


「騙されてるよそれ」


「イヤチャウッ!お前らはあの子のこと何も知らないやろ。

あの子はな『おじと話してる時だけ落ち着くんだよね』とまで言うてくれんねんぞ」


「洗脳済みで草」


これにはミャオチョフも苦笑いするしかなかった。


「しかもな、よよちゃんも、おじと同じくパン屋の起業を目指してるんや。やけど今それにちょっと失敗して借金が300万円あるんや。すごないか?」


「色々とすごいな」


ツッコミどころが多すぎて、ミャオチョフはこれ以上突っ込むのは無理だと判断した。


「そうや。おじより10歳以上も若いのにおじよりしっかりしてるんや」


「しっかりしてたら借金背負ってないやろ草」


「借金できるってのはそれだけ信頼があるっちゅうことやねん」


「エア借金やろ」


「ちゃうで。おじも返済手伝うためにもう200万円渡したったし」


「え?ガチ?」


「ガチや。借金返せんと風俗沈められる言うてたねん。おじが彼女を救ったんやで」


「お、おじ……」


おじのあまりにも哀れさに、ミャオチョフはもう何も言えなくなっていた。


「いい金の使い方っちゅうのは、おじみたいな使い方やねん」


上機嫌になっているおじに対し、ミャオチョフはおそるおそる、


「200万円渡した後音信不通とかにはなってない?」


と尋ねた。


「なるわけないやろ」


おじの返答は意外だった。


「最近の詐欺はアフターフォローまでしっかりしているものなんか?」


「よよちゃんとおじの愛は本物やで。詐欺なんかやない」


その時、テレビから流れてきた衝撃的なニュースに二人は耳を疑った。


【頂き女子よよちゃん逮捕 その正体はおじさんだった】


「え?」


おじはテレビのテロップに表示された文字から目が離せなくなっていた。


『本日警察は、デュラチャ上で拾い画を使って性別を偽り詐欺を働いていたを、多額の金銭を不正に騙し取っていたとして逮捕したことを発表しました。

警察の発表によれば、この男性は、いわゆる"おぢ"と称される中年男性をターゲットにしており、男性の下心につけこみ金銭をだまし取るマニュアル本に従って、被害者たちから合計で数百万円に及ぶ金銭をだまし取っていたとされています。

被害者たちは、彼を誠実な女性であると信じ込んでおり、彼の今すぐ金銭が必要だという演技に騙され、銀行振り込みやPayPayでの送金など、さまざまな形で金銭を送金していたとのことです』


ミャオチョフとおじは、揃って口を開けたまま固まっていた。


「じゃ、あんま気を落とすなよ」


いたたまれなくなってなのか、ミャオチョフがおじの部屋からそそくさと退室する。


「嘘やんな……よよちゃん……」


動揺しているのか、おじはそう言って椅子から立ち上がろうとした。だがバランスを崩してしまったみたいでそのまま床に倒れ込んでしまった。


「借金返し終わったら、おじと一緒にパン屋始めてくれる言うたやん……」


おじは床で横向きに寝そべりながら、手で顔を覆った。


「よよちゃん!おじを騙したんか!よよちゃん!」


おじは泣きながら床に何度も拳を叩きつけた。


BAD END

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