おじvsPS5買い占め転売ヤー

「こじ!今日は悪質転売ヤーを懲らしめるために街に来てるで」


おじのツイキャスでは、おじが街歩きしている様子が映し出されていた。


「おっ、さっそく悪質転売ヤーのお出ましや」


おじの配信画面には、某大手家電量販店の前にたむろする、ガラの悪い若者達が映し出されている。おじはそこにインタビューに向かった。


「兄ちゃん。紙袋いっぱい持ってるな。そんなにいっぱい何買ったんや?」


おじが転売ヤーの1人に声をかける。


「ハァ?誰だよおっさん。勝手に撮ってンなよ」


「『正論おじさんの世直しチャンネル』のおじや。編集ではモザイクいれるから許してくれ」


おじは現在進行系で配信を行っているのだが、そこは黙っておくようだ。


「ぷっ。底辺Youtuberってやつ?再生数稼ぎお疲れ様でーす」


「お前らもおじを底辺言うんか?」


おじの声色が変わった。どうやら少し怒っているらしい。


「底辺だから知名度目的でわざわざ炎上するような動画撮ってンだろ?」


「チャウチャウ。おじがやってるのは世直しや!」


おじはそういうと、無理やり転売ヤーの紙袋を力任せに奪い取った。


「オイ!何してンだよ犯罪だぞ!」


おじが紙袋を破きまくって中身を確認すると、そこには全て薄型PS5が入っていた。


「見ろ。これが証拠やねん」


「何が問題なンだよ?」


おじが店の壁を指差すとそこには、


『PS5は人気商品のためお一人様1台限りとさせていただきます』


と、張り紙が貼ってあった。


「ここに書いてある文字読めんのか?」


おじの指摘に転売ヤーは悪びれずに、


「俺1人でいっぱい買ったわけじゃなくて、友達と一緒に買いに来たのを俺がまとめて持ってんだよ」


「バレバレの嘘ついとんとちゃうぞ!正義を執行するで」


「お、おい!何すンだよ!」


転売ヤーは手を出されるのかと思い焦り始めるが、おじの発したのは意外な一言だった、


「このPS5は全部没収や」


おじはそう言って、地面に置かれたPS5を勝手に回収し始めた。


「ハァ?お前がPS5欲しいだけじゃねェのか?」


「チャウチャウ!素直に従わないなら私人逮捕するで?」


「あのな、私人逮捕は現行犯じゃないとできないンだわ。それで言うと、むしろお前が逮捕される側だぞ」


「おじは何も悪いことしてへん」


「いいから、とりあえず俺のPS5を返せ」


おじは渋々といった様子でPS5を置く。


転売ヤーはそれを拾い上げ、


「俺の動画アップしたら通報して絶対痛い目に合わせてやる。正義マン気取りの馬鹿オヤジがよ!」


と、捨て台詞を吐いてダッシュで逃げ始めた。


「待てや!」


おじは誹謗中傷を絶対に許さない。反射的に転売ヤーのことを追いかけ始めた。


「ハァッハァッ」


転売ヤーの足は速く、逃げ切れると思っていたのだろう。


しかしさすがにPS5を何台も持って走るのは分が悪かったようで、彼とおじの距離は縮まるばかりであった。


「捕まえたで!」


ついに、おじは転売ヤーのことを羽交い締めにした。


「離しやがれ!このジジイ!」


転売ヤーがジタバタするが、おじは微動だにしない。


「なぁ。今どんな気持ちや?正義マン気取ってる底辺Youtuberに捕まって」


おじはそう言うとポケットの中から手錠を取り出し、転売ヤーの手首にかけた。


「おい!お前に何の権利があってこんなことしてンだ!」


「悪質転売ヤーを懲らしめるためや」


おじはそう言って再びPS5を奪い取った。


「俺のPS5返せよ!」


転売ヤーが暴れるため、おじは追加で手錠を取り出し、近くの車止めポールに転売ヤーを固定した。


「いったんPS5をお店に返してくるで。そこで待っとけや」


「ふざけンな絶対返す気ねェだろ!」


「おじはな、正義の味方になりたかったんや」


「お前のどこが正義なんだよ!」


転売ヤーの叫びも虚しく、おじはPS5を持ってどこかへ消えていった。



***



駅のロッカーにPS5を預けたおじが犯行現場に戻ってくると、手錠で動けなくなった転売ヤーの周りには大量の警官が集まっていた。


「あ、あいつっす!」


転売ヤーがおじを指差すと、警官たちが一斉におじの方を向いた。


おじは誤魔化すために後ろを振り返ってみるが、当然誰もいない。


「君ちょっといいかな?」


「はい!いつもお勤めご苦労さまですやで」


おじはさっきまでの態度が嘘のように愛想よく警官に返事をした。


「率直に聞くけど、あれ君がやったの?」


警官は手錠で動けなくなった転売ヤーを指差し、おじに問う。


「せやねん。おじの手柄やねん。こいつはな、悪質転売ヤーなんや」


警官たちの間でざわざわと不穏な空気が流れた。


「じゃあとりあえず、君の手錠を外してもらっていい?我々も手錠持ってるからさ」


「はいですやで」


そしておじは素直に転売ヤーの手錠を外した。


「……」


「外しましたやで!」


「うん」


ガチャ。おじが転売ヤーの手錠を外した瞬間、警官がおじの手首に手錠をかけた。


「え?」


こうしておじは逮捕され、PS5も当然没収された。



BAD END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る