おじがペイペイフリマで詐欺られる話
転売ヤーの朝は早い。
その日おじは朝起きると、いつものように最新のセール情報がないかチェックを始めた。
「このカメラのレンズ、ペイペイフリマでこの値段より高値で売れてるっぽいし買って転売できそうやな」
おじはカメラのレンズに一ミリも興味がなく、カメラのレンズの知識も全くなかったが、買って売れば利益が出ると見込んでその商品を購入した。
「転売ヤーは一瞬の決断力が試される過酷な仕事やねん」
***
3日後。おじが購入したカメラのレンズは届いた。
おじはプチプチに包まれて届いた商品を、そのまま横流しする準備を始める。
「84,002円。新品未開封品。カメラレンズの情報もちゃんと乗せてと……よし!」
おじが適当に写真を撮ってペイペイフリマに出品すると、
すぐに「ピロン!」と、おじのスマホの通知が鳴った。
嬉しいことにおじが出品したカメラレンズはすぐに購入者が現れたのだ。
「転売成功ですわぁ。こんなに簡単に1万円稼げるなんてちょろいねん。なんでみんなやらんのやろな?」
しかしこの時のおじは、まだ気づいていなかった。
自分が転売ヤー同士食い物にしあっている魔境に足を踏み入れていることに。
***
『【返品希望】この商品は新品未開封の場合はシールが付いてるはずなんですが破れていましたので未開封っていうのは嘘ですね。まだプチプチも開けてないんで返品させてください』
おじの送った荷物が受け取られた後、購入者からそんなメッセージが届いた。
「なんやねんこいつ!まあ確かに未開封品かちゃんと確認はしとらんけども」
おじの取引は信頼がモットーだ。お互いが気持ちよく取引を終われるようにしたい。
というのは建前で評価が悪いが付いてしまうと購入率も下がってしまうので低評価が付いてしまうのはおじとしても何とも避けたい所なのだ。
「こいつの販売商品見たらもろ転売ヤーやん。おじが出したカメラレンズと同じやつ5個も出品してるし。しかもこの値段で買っても手数料引いたら利益でえへんやろ」
どうやら購入者はカメラレンズを使用目的で買ってるのではなく、おじと同じく転売目的で購入したようだ。
「しゃーない。返品の方向で進めるか。……ってあれキャンセル手続きのフォームないやん」
ペイペイフリマはメルカリと違って商品が発送された時点で商品のキャンセルができなくなる仕様だ。
おじがペイペイフリマの説明を見るとそこには下のように書かれていた。
『商品発送後のキャンセルは不可。ユーザー間で配送に必要な個人情報をメッセージでやり取りし、任意の配送方法で返送してください』
「なんやねんこれ!手数料取ってんのにおかしいやろ!」
ペイペイフリマは確かに販売手数料が安いことはメリットがある。しかしその分運営からの手厚いサポートは受けられないのだ。
「ままええわ」
おじは返品を受け付けることに決め、返信を書いた。
『ご迷惑おかけして申し訳ありませんやで。おじの住所と電話番号教えるので口座情報教えろや。返品受付次第返金するで』と。
おじが購入者にメッセージを送るとしばらくして返事が届いた。
『【却下】自分がペイペイフリマに同じ商品を出したんでそれで返品手続きを進めましょう。お互いが評価を握り合ってるのでそっちのほうが安心ですよね』
「はぁ?ペイペイフリマ通したらまた手数料引かれるやんけ!イヤッでも今回手数料引かれるのは相手だから84,002円で出してたら相手が損するだけや」
おじは購入者の販売商品一覧を確認した。
そこには【返品用】という商品名で価格は10万円で出品されていた。
「なんで値上げしとるねん!」
おじはこれは何かの間違いだと思い、
『販売価格10万円になっとるで^^;』とメッセージを送った。
返事はすぐに返ってきた。
『【警告】新品未開封と嘘の記載があったため私の方に一切の落ち度はありません。手数料と配送料と迷惑料を踏まえた価格を設定しました。
この条件を飲めないのであれば運営と警察に通報し、評価悪いを付けブロックと報告もさせていただきます。以上』
「あかんどないしよどないしよ」
購入者の強気な態度に、おじは頭を抱えるしかなかった。
「バックレるか?いや評価悪いは絶対つけとうない……。返品されたものをまた売れば損失は2万くらいで済むな。これ以上トラブルのも面倒くさいし仕方ないからそれで手を打つやで」
結局おじは不当に高くなった返品用の商品を購入させられ、赤字が確定したのであった。
***
1週間後。
「佐川急便でーす」
おじの元に再び商品が返ってきた。
「ご苦労さんですやで」
おじが届いた荷物をどうしようか眺めていると、スマホの通知音がなった。
画面を見るとペイペイフリマの取引メッセージの通知で、
『【受取評価】今配達完了になりましたよね。初回の取引から時間経ってるんですぐに受取評価よろしくお願いします』
とこの荷物を送ってきたユーザーから取引メッセージが届いていた。
「こわっ……。ずっと監視してたんかこいつ頭おかしいでほんま」
おじはこれ以上このユーザーと関わりたくないと思い、早々に受取評価を終わらせようとしたが、ふと荷物のプチプチに違和感を感じた。
「あれ、このプチプチ一回切られたあとテープで止められてるやん。しゃーない一回開けてみるか」
おじがプチプチを一旦剥がし、箱を開けるとそこには、
「何やねんこれ!」
カメラのレンズではなく石ころが入っていた。
おじは怒りに任せスマホを取り出し、猛烈なスピードで取引メッセージにお気持ち表明を始めた。
『おい、どういうことやねん。お前の転売はおじの転売と違ってみんなを不幸にしかしいひん。お前は悪質転売ヤーや。
こんな事言われる理由はわかってるよな?お前がみんなの大事な商品を石にすり替え返品してるからや!
お前が助かる唯一の方法は、誠心誠意を込めて謝罪して盗み取ったおじの商品を返すことや!
それができないなら、おじの膝食らう覚悟の準備をしておけ!いいな!』
おじは震える手で渾身の説教文を詐欺師に送り付けた。
しかし、いくら待てども、返事が返ってくることはなかった……。
その後、おじと転売ヤーは運営にBANされたそうです。
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