おじオマエラヤン
「お前ら、おじ世界の真理に気づいたかもしれへん」
「え?」
おじのチャット部屋で話を聞いていた名無しはおじトークを1ミリも理解することができなかった。
「おじな、デュラチャで一つ不思議に思ってん。なんで、正しいことしか言わんおじがいつも孤立するんやろって。お前らなんでか分かるか?」
「うん?」
「デュラチャは既にオマエラヤンの手に落ちていたんや!」
「オマエラヤン?」
「オマエラヤンはおじに嫌がらせするため熱心に活動する集団ストーカー兼アンチのことやで」
「へ、へぇ」
「しかも最近はデュラだけじゃないねん。現実でもオマエラヤンの気配を感じるようになってきたんや」
「と言うと?」
「たとえば、コンビニのレジで会計しているときや。お釣りをもらうやろ? そのお釣りを財布に入れるとき、後ろにいる客の視線が気になって振り返ったらめっちゃ睨んでくるんや。あれは絶対にオマエラヤンやで」
「普通コンビニのレジで後ろ振り返らないだろ」
「イヤッ!まさかお前もそうなんか?」
おじは何かに気づいたような素振りを見せると、
「おじに意見したいなら顔出しせんかい!」
とおじに反論した名無しを恫喝し、追い払ったのであった。
「やっぱりオマエラヤンやったか。オマエラヤンの特徴の一つに匿名性を異常に気にするってのがあんねん。住所聞いたときに県も教えてくれないやついるやろ?あれな、オマエラヤンやねん」
「他には特徴はないの?」
おじ部屋の常連であるミャオチョフがおじに質問した。
「オマエラヤンはな、とにかくおじに嫉妬して嫌がらせしてくんねん」
「おじに嫉妬するやつおらんやろ草」
「イヤッ!あいつらはな、おじが光の世界の下で楽しそうにしてるから、おじを憎んでんねん」
「どういう思考回路してるんや」
「わからへん。お前らネットの子の考えることはわからへん……」
おじは少し考え込むような素振りを見せると、再び語り始めた、
「おじはこれまでオマエラヤンに暴言吐かれても切断することはせんかった」
「なんで?」
「切断しても逆恨みされるからや。やからおじはオマエラヤンに対抗するために
"心のブラックリスト"制度を導入したで」
「なんぞそれ」
「心のブラックリストはな、別名サイレントおじファム外しとも言うで。『あ、こいつもうおじの言う事理解できないんやろな』って思った瞬間もうATフィールド発動や」
「変なもん作ってて草」
「ミャオチョフ。他人事じゃあらへん。お前もおじの心のブラックリスト入ってるで」
「なんでや!」
「ミャオチョフだけじゃないで。おじの部屋来て張り切ってる常連連中はほぼアウトや」
「……」
おじはもはや誰も信じることをできないのだ。
「おじな、毎晩チャット入り浸ってるのにここまでわかりあえる人いないのおかしいと思うねん。きっともうこのチャットにはな、おじかオマエラヤンしか存在しないんや」
「おじ頭おかしくなりすぎて草 ローションから電磁波出とるやろ(煽り)」
「頭がおかしいのはお前らやん!おじが稼いでるのに嫉妬してるのオマエラヤン!
毎日毎日呼んでもないのにおじの部屋来て好き放題誹謗中傷するのオマエラヤン!
オマエラヤン!オマエラヤン!オマエラヤン!オマエラヤン!オマエラヤン!」
ミャオチョフの発言がおじの地雷に触れてしまったのか、おじは狂ったようにオマエラヤンと叫び、"心のブラックリスト"に入ったユーザーを片っ端から切断していった。
「ハァ……ハァ……」
おじに口答えする人間が消された部屋では、もはやおじの荒い息しか聞こえることはなくなった。
「オマエラヤンと仲良くしたらオマエラヤンになるねん。おばぶが最近おじのとこ来ないのもそのせいに違いないねん。オマエラヤンがおじの悪口いうからアカンねん!!!!」
おじは一人でキレると部屋にあったローションボトルを床に叩きつけた。
「こんなもの!」
ローションのボトルが割れ、ドロリとした内容物がこぼれる。
「……なんでオマエラおじを尊敬せえへんのや」
その時、誰も居なくなったかと思われたおじ部屋でおじに返事を返すものがいた。
「おめでとう。心のブラックリストから本物のブラックリストに昇格したんだね」
これまでおじを惑わせてきた謎の赤アイコンだ。
「お前はヤンじゃないねんな?」
「おじがそう思うならそうなのではないだろうか」
「まぁええわ。おじは行くで」
「どこへ?」
おじはさっきまでの情緒不安定が嘘のように笑顔になると、
「オマエラヤンに気をつけようって注意喚起のビラ撒いてくるで。光のおじ戦士達を集めるんや」
そう言い残し、部屋を出ていった。
BAD END
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