おじローションクラウドファンディング

「おじな、ローションクラウドファンディングやろうと思うねん」


ある日のツイキャスにて、おじは思い立ったようにポツリとそうもらした。


「なに言ってんの、おじ!」


配信に上がっていたおばぶが突っ込みをいれた。


「イヤッ、メルカリでな、ローションがめちゃくちゃ売れるんよ。だから需要はあんねん」


「まぢで?」


「でも1本売っても利益100円とか200円くらいやろ?それで1000本売ったとしても10万円やんか。1000万稼ぐにはローション1億本売れないとあかんから全然足らんわ。しかもそんなん時間かかるしな」


「ローション1億本ってやばすぎw」


「そこでおじもっと儲かる方法ないかなって考えてん。ほしたらなクラウドファンディングってのがあるらしいねん」


「なにそれ!」


「なんかウェブ上にプロジェクトの説明を書いて、みんなに投資してもらうねん。リターンは返さなアカンのやけどな」


「はぇ~」


「それでな、おじクラウドファンディングの案を考えてきたんよ。聞きたいか?」


「いやべ…聞きたい!」


おばぶはおじのこの話にはあまり興味がなさそうだったが、その態度を全面に押し出すのも悪いと思ったのか、仕方なくおじの話に興味があるフリをした。


「おじはな、ローションで恵まれない子どもたちを救いたいねん」


「どういうこと?」


「極貧生活に潤いを与えたいねんローションだけにw」


「うわ……」


おばぶが親父ギャグに対して冷ややかな反応を示すのを横目におじは続ける、


「冗談はさておきな、西成は治安悪いからストリートチルドレンがいっぱいおんねん」


「西成まじやばいね」


「そこでおじは考えたわけや、ストリートチルドレンを集めておじローションを大量生産し、その資金を元におじファミリーを拡大していくんや」


「つまり住所不定の子たちをスカウトしておじファミリーにするってこと?」


「そういうことや!スラムの子どもらは金がないから勉強できないやろ?でも高学歴のおじなら勉強も教えれる。おじが教育することで貧困から抜け出せるし一石二鳥や」


おじは興奮冷めやらぬ口調で目をぎらつかせながらそう語った。


「すごいじゃん、おじ!」


「早速、クラウドファンディングサイトで募集を開始するで」



***



意外にもおじのクラウドファンディングは成功し、資金が100万円調達された。


そして数日後、おじは西成の路上でストリートチルドレンを探し始めたのであった。


「みんな~、おじのローション受け取ってくれへんか」


おじがそう言うと、路上にいた少年少女たちが一斉におじの元へ駆け寄ってきた。


「おじさん、これなんですか?」少年の一人が手に持っていたボトルを掲げながら言った。


「これはな、ローションっていうんや。これを塗るとあら不思議、体がヌルヌルになるねん。ほら試してみ」


おじは少年の手にあるローションを手に取り自分の体へと塗りたくった。


「ほら見てみ、おじの体がツルツルになったで」


その様子を見ていた他の子供たちは恐る恐るおじの真似をしてローションをおじの体のあちこちに塗りだした。


「うおぉ、すげえ!なんだこれ!」


子どもたちがはしゃいでいる所を満足そうに眺めているおじ。しかしそんな幸せな時は長くは続かず、遠くからサイレンを鳴らしながらパトカーが近づいてくる。


「西成警察の者です。不審な男が児童と接触しているとの通報を受けて来ました」


警官がそう言っておじの前に立ちふさがった。


「おじは怪しいもんじゃないで。ただ恵まれない子たちをおじファミリーに入れてあげるんや」


おじは必死に弁明するが、警官はおじの手元に握られているローションを見てさらに疑いを強める。


「それは何に使うものでしょうか?」


「これはローションいうんや。体を洗ったり、マッサージしたりできるねん」


「そうですか。では署までご同行願います」


こうしておじは警察に逮捕された。


BAD END

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