おじ理解度テスト
おじ理解度テスト。それはおじの魂を問う究極のテストだ。
今日おじ理解度テストに挑戦するのは、おじとの付き合いが最も長いと言われているocha。
ocha以外の人達は前日に同じテストを受けていたが、あのおばぶでさえも50点というかなりの高難易度のテストである。
しかし、おじはochaならやってくれると信じていたのだ。
「合格点は80点や。80点超えたらアマギフ1000円で、満点取ったらアマギフ3000円分やる!」
おじが合格点を超えてほしいと期待を込めての意味でもアマギフを賞与に用意していた。
「え、誰かが問題教えてたら100点取れちゃわない?」
カンニングで不正に賞金をさらわれることを心配するおばぶに対しておじは、
「イヤッ!おじファミリーの中にそんなことするやつはおらん」
と力強く否定するのであった。
「じゃあ上がってこいocha」
今日は珍しくおじの配信にochaが上がり、対談形式でクイズが進められることになっているのだ。
「こんばんは~」
キャスに上がったochaが挨拶をする。
「声可愛い!ハァハァ!」
思いがけぬカワボにカナタはochaの声に興奮を隠しきれない様子だ。他の男達からも野太い声援が上がっている。
「準備はいいな?いくでocha」
そして、おじ理解度テストが始まった。
ブッブー。
クイズの不正解音が虚しく響き渡る。
「おじが一番しばきたいオマエラヤンは無キャやろ。おじ界では常識やぞ?」
「ごめんなさいごめんなさい」
他のおじファミリー達が楽々解いていった問題を間違えてしまうocha。おじにはこの調子で合格点取れるのかという焦りが現れ始める。
「まあ次行くで。おじな好きな女のタイプはどれ?」
・おばぶ
・お茶
・ひめか
・おかしちゃん
「この問題は特別お助けキャラとしておばぶを呼べるで」
「じゃあおばぶしゃん、よろしくお願いします」
そして、おばぶがキャスに上がってきた。
「え、うち何言えばいいの」
「昨日おばぶがどれ答えたかだけ教えてや。答えはいっちゃだめやで」
「うちは当然おばぶって答えたよね。ブッブーって鳴った時泣きそうになったわ、まじありえないんだけどおぢ!」
おじはそれが聞きたかったとばかりにゲラゲラ笑って満足そうだ。
「おばぶさんがハズレってことがわかっても、情報量は特に増えないですね……」
ochaがぽろりと漏らした一言が地雷だった。
「え、それってochaはうちが絶対あり得ないってこと?お前!」
「すみませんすみません、そういうつもりじゃ、すみません」
ochaは内心絶対おばぶは無いだろと思いながらも平謝りするのであった。
「じゃあochaは誰が正解だと思うんや?」
「そうですねぇ。前おじが好きな人に対して好きって言えない奥手な人がタイプで、私がそのタイプとか言ってたんですよね。結局それはおじの勘違いだったんですけどうーん」
「つまり誰や?」
「お茶で!」
その瞬間、おじの眉間にシワが寄り渋そうな表情を見せる。
「ファイナルアンサー?」
「なにそれ……ファイナルアンサーです」
「……」
ブッブー!
「正解は、おかしちゃんや。ocha。おまえ恥ずかしくないんか!」
「いや、違うんです。ひめかちゃんは当時高校生でしたのでさすがにあり得ないし、おかしちゃんの事知らないので」
「それにしてもおばぶだよなぁ!?」
「違うんです!これは正当な理由があっての結論だから恥ずかしくないんです」
「……」
おじはその答えに納得できていないようで、
「どうすんねん、これ。もう合格点取るの無理やぞ」
と怒りのあまりにだんたんと声が震えてくるのであった。
その後もochaはおじの本質を問う問題に間違え、その度におじは、
「ochaが一番おじのこと理解してたんじゃないんか」と頭を抱える。
結局ochaの最終的な結果は、途中お助けがあったのにも関わらず、合格点を大きく下回った40点なのであった。
「ocha。お前もうおじファミリー降りろ」
「いや最初からすでに入ってないですし……」
「チャウねん!こんなに付き合い長いのになんや40点て!アンチレベルやぞ!」
おじが怒った理由は単純明快。おじは自分のことを理解されてないと感じると怒るのだ。
「おじは理解を求めすぎなんですよ」
「チャウ!お前が人に興味なさすぎやねん!そんなんじゃ就活もうまくいかないで」
「それは違うでしょ。人に興味あってもその人のこと理解できるとは限らないわけで、おじの言ってることは飛躍してるよ」
「ごちゃごちゃ抜かすな!」
しかしおじの怒りは収まらなかった。
「じゃあなんでおじのこと理解できんねん!?」
「それはなんというか……根っこの部分が違う人間なんでしょうね」
「イヤッそれは甘えやで?今ビジネスの世界ではダイバーシティちゅうもんが注目されてるんや。
これは多様性を認めていこうという考え方で、一流企業があえて多国籍の人材を取り入れ、どんな価値観の人でも使えるサービスを提供していきましょうちゅうことや」
「はぁ」
「つまり根っこが違くても相互理解できるんや。ocha、そんなんじゃ置いていかれるで、世界に」
「おじだって私のこと全然理解してませんよ。おじが理解してたら就活煽りなんて絶対してきませんからね」
「イヤッ、おじは理解してる。これはochaのためを思っての叱責やねん。覚えてるか?」
「何がですか?」
「昔おじが試験前に勉強サボってチャット部屋を立てたら、ochaはおじに『チャットしてないで勉強しろ』って言ってくれたよな。
そん時、おじ思ってん。あ、この子はおじと話したい気持ちを抑えて、他人を叱れる熱い魂を持ってる子なんやなって」
「え、違いますよ。別にその時そんなおじと話したくなかったし、私も勉強しなきゃいけないから言っただけです」
その言葉に、おじは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして時が止まった。
「……もう何もないで」
「え?」
「おじに対する理解も、おじとのいい話もなかったらochaには何もないで!?」
「すみません……」
おじの剣幕に押され、ochaはただただ謝る。
「なぁ、おかしいやろ。ずっとおじと一緒にいたのに、なんでおじのこと分からない?おじのこと軽く見てるよな?ぶっちゃけおじのこと見下してるよな?」
「いけない!おじの被害妄想が始まっちゃう!」
おじがメンヘラおじになりかけたその時、
「大丈夫だおじ。俺が一番のおじの理解者だよ」
おじの配信に割り込んで来たのは、よのだった。
よのは配信画面に一枚の画像を写した。そこにはおじ理解度テスト100点、つまりおじのことを完璧に理解している証拠が写っていたのだ。
「す、すげぇ」
「100点?」
「何だこの男は」
とリスナー達からも信じられないといった声が上がる。
「よの、お前が一番のおじの理解者やったんか」おじはそう言いながら涙を浮かべた。
「当たり前だろう。俺だっておじと付き合い長いんだぜ。だから分かるさ」
「くぅ~キャス出禁にしてすまんかった!よのぉ!」
おじは号泣しながら謝罪するのであった。
「いいってことさ」
リスナーたちはこのやり取りに感動し、拍手を送る。
その後、おじとよのは幸せに暮らしたという。
HAPPY END
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