おじ約束

「おじ、一緒にサッカー見ようね」


おばぶがおじと交わした約束。しかし、それは叶わぬ約束だった。


2022年11月17日。この日はワールドカップ開幕前の最後の試合として日本とカナダが強化試合を行うことになっていた。


「明日お前らのためにサッカーの前半だけ実況したる」


前日、おじは気乗りがしないながらもおばぶのため、サッカーを実況することを約束していたのだ。


しかしサッカー放送日の当日、そろそろキックオフが始まりそうな時間になるとおじは、急にソワソワし始めると「もう寝なきゃあかん」と手のひらを返すのであった。


「寝ないでしょ。サッカー見るんだから」


ヌマルネコが突っ込む。するとおじは「チャウチャウ! アイタタタタ! あ、急に持病が悪化したあ!」と三文芝居を見せ始めた。


そう言われると心優しきおじファミリー達はただただおじの体調を心配するしかないのであった。


「すまんなみんな、この埋め合わせはするで。日曜日は『おじ理解度テスト』やろうや」


そう言って、おじは早々に部屋を去っていったのであった。



-土曜日-



おじは悩んでいた。


「あかん、エラーが解決できへん」


おじ理解度テストはおじが借りていたサーバー上で行われるようであったが、以前は動いていたはずのおじサーバーのプログラムが動かなくなっていたらしいのだ。


「おじ明日までに『おじ理解度テスト』完成させられるの?」


おじリスナーが納期の心配をする。


「いけるいける。このエラーさえ解決できれば余裕やねん」

「問題自体は完成してる?」

「おじの頭の中ではほとんどできてるで。あ、あと誰がどう解答したか見れる機能もつけたいな」


おじは期限が迫っているのにもかかわらず、あれもしたいこれもしたいと風呂敷を広げまくるのであった。



-日曜日-



そしておじ理解度テストの約束の日。

いつもまで待ってもおじが現れることはなかった……。



-月曜日-



再三に渡りおじに裏切られ続けたおじファミリーのメンツがついにおじに問い詰める。


「おじ昨日の約束はどうなったの?」

「約束?」


おじはそんなこと初めて聞いたかのような声をあげた。そしておもむろに上半身裸になり、握り拳を作って筋肉を見せつけながら、



そう言い切った。


「サッカーもおじ理解度テストもやるって約束したよね?」

「うるさいねん! 黙れや! おじこそが正義」


そう吐き捨てるとおじは言い訳を始め出した。


「だいたいな、なんでおじがオマエラヤンのために頑張らなあかんねん。おじはいつもいつもお前らにサービスしてやってる側やで?」

「えぇ……」


あまりの発言に困惑の声を上げるおじファミリー一同。おじの自分本位さに言葉を失う中、おじは話し続ける。


「そもそも、オマエラヤンがやれやれ言うからやる気なくしたねん。お前らが悪いんや」


あまりに身勝手すぎる主張に誰もが唖然とするしかなかった。


「むしろお前らがおじに対して何かサービスするべきやろ!」

「じゃあサービスしてやるよ」


そこに割って突如としておじの家に入ってきたのは、サイレントおじファム外しをされた元おじファミリーだった。


「おい、誰の許可得て入って来とんねん!? 今おじは寝なきゃいけないんじゃ!」

「そんなに寝たいんなら寝させてやるよ、サービスだぜ?」

「あがっ……ぐぅう!!」


おじの苦悶の声と共に配信は途切れた。


その後、おじが配信することは二度となかった。


BAD END

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