おじ自撮り棒
ある日のこと、おじは自撮り棒を手に持って散歩していた。
「結局全然使えへんやんかこれ」
長らく使っていなかったこともあって、すっかり自撮り棒の使い方も忘れてしまったおじはブンブンとそれを振り回す。
そうしてる内におじの手から自撮り棒が抜けて、近くのラーメン屋の中に飛んでいってしまった。
「あかん!おじの自撮り棒が…」
自撮り棒を失ったおじは途方に暮れていた。
すると突然ラーメン屋の中から自撮り棒を持った男が出てきたのだ。
男はおじの方を見てニヤリと笑った後、
「あなたが落としたのはこの『グッチの自撮り棒』ですか?」
と問いかけてきた。
「え?あ、うーん、グッチだったかもしれへんなぁ」
パシーン!
おじが答えると、男はおじをビンタした。
おじは驚いた顔を浮かべている。
男はグッチの自撮り棒を自分のエプロンの中にしまうと、新たに自撮り棒を取り出した。
「それとも、この『エレコムの三脚利用も可能な軽くて丈夫な自撮り棒』ですか?」
「ああ、たしかそれやわ」
「コラ~!」
男がおじの胸ぐらを掴んで叫んだ。
「……」
男はエレコムの自撮り棒もしまってしまう。そして、最後におじが落としたであろう自撮り棒を取り出した。
「それとも、この『新品なのに最初から傷つきまくってる中華製の粗悪な自撮り棒』ですか?」
「はい……」
おじが震えながら手を差し出すと、男はおじに自撮り棒を渡した。
「ど、ども」
おじがそそくさと立ち去ろうとしたその時、
「……すぞ」
男が小声でボソボソと何かを言う。
「え?」
「うちのラーメン啜ってレビュー書いてけやボケ!」
後日、この店のレビューには顔が死んでる自撮り写真と共に星5レビューが投稿されたという。
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