おじ教育

「ヌマルネコ、お前をおじファミリーから追放するで」


おじは怒っていた。ヌマルネコという一ユーザーがおじの品位を貶めるクソ小説を公開したからだ。


「すみませんでした…」


「まあまあ、沼ネコも反省してるみたいだしいいじゃんおじ」


殊勝に謝るヌマルネコをおばぶが庇った。しかしおじは、


「チャウねん!こいつはいつも悪い事した後謝ってるフリしてるけど本心では全然反省しとらんねん!」


「うう」


「こいつほんっまこすいねん!例えるならおじがオマエラヤンにやられてる時に遠くから隠れて石投げてくるようなやつなんや!」


それを聞いた人々の口からは、


「陰湿w」


「最低だ…」


といった声が上がった。


「騙されたらアカン、こいつはアンチ側の人間なんや。表面上はおじに友好な態度を取っていても、考え方や発想はよの無キャとまるで同じや」


「よの最強!無キャ最強!」


ヌマルネコが叫ぶ。


それがおじの逆鱗に触れた。おじがテーブルを強く叩く。


ドンっ!!!!


「チャウやろ?」


「え?」


「『おじが最強』やろ。おじはこの部屋の王やで?」


「はい……おじが最強です……」


ヌマルネコが必死におじをなだめるがそれでもおじの怒りは治らない。


「お前の小説ではおじの魂のことは何もわかってへん!ちゃんと書け」


そこにはヌマルネコも思う所があったようで、


「おじが思うおじ像で書いたら面白い小説にならない!」


と言い返した。その一言にカチンと来たおじは机の上にあったローションボトルを握り締め、振りかぶるとそれを床に叩きつけた。


パキン!!! 大きな音と共にローションボトルが割れる音がした。その様子にリスナーたちはざわつく。


「……」


おじは何事もなかったかのように割れたローションボトルを拾い上げるとカメラの前に近づけ、


「みんな見てやこれ。これな、郵便局員が割ったねん」


「いやいやいや無理があるだろ!」


チャットでツッコミが入った。


「中身のない会話やめて意味のある話しなよ」


そこに颯爽と現れたのは濃い人というデュラチャ民だった、


「おじの話って要点わかりにくいし結論も出さずに延々と同じ話を繰り返してるだけじゃん」


痛いところを突かれてしまったおじはこいつだけは許さんと決意を固めた。


「濃い人、お前キャスあがれ」


「俺通話できないんだよね。チャットで喋るわ」


「じゃあチャットでもいいから中身のある会話の内容教えてくれ」


「そうだな、死刑賛成か反対かどうかは?」


「全然チャウ。そういうのじゃないねん」


どうやらこのテーマはおじは興味がなかったようだ。おじは少し考え込むそぶりを見せると語り始める、


「おじな、子供への体罰容認派やねん。子供を殴れる親ってかっこよくないか?」


「いやいや暴力はよくないでしょ」


おじの前時代的な教育方針に濃い人は異を示すがおじは反論する、


「イヤッあくまでも子供が悪いことした時、躾として鉄拳制裁するだけやで?」


「でも殴られて育った子供は人を殴るようになるぞ」


「チャウチャウ。それは普段から殴られてる子やろ。おじは悪い事した時だけ殴るんや」


「悪いことって誹謗中傷とか?」


「せやな、子供が誹謗中傷してたらぶん殴ったるわ。こういうのはな、身体でわからせないとダメやねん」


「そうか。俺は殴らずとも話しあえば理解できると思うんだ。でもおじの考えも少しは理解できたよ、ありがとう」


そう言い残すと濃い人は納得したかのように去っていった。ところがおじは、


「なんやねんあいつ!中身のないやつだったな」


と憎しみの籠もった呪詛を吐き捨てた。そう、おじは未だ最初に言われたことを根に持っていたのだ。


そんなことを知らないリスナー達は、「え、急にどうしたの」


とおじにドン引きした発言をし、その態度がさらにおじの怒りの燃料となっていく。


「あいつもどうせオマエラヤン!魂ないネトチル、おじの熱い魂に嫉妬すな!デュラチャの子は何もわかってないカスばっかや!」


いよいよおじの発狂もクライマックスにかかろうとしていた。ドンドンと足を踏み鳴らし怒りを表現するおじを視聴者達は呆れた表情で眺めているしかなかった。


すると突然、おじの部屋の扉が開き、


「かずひろ!またネットで誹謗中傷してるの!?いい加減にしなさいって言ったでしょ!」


おじのお母さんが乱入してきた。


「チャ、チャウやん!先に誹謗中傷してきたのはあっちで」


「黙りなさい!」


バシッ! おじの頬が平手打ちされる。


「あっあっ…堪忍…堪忍や…」


「あんたみたいのはね!殴られないと分からないのよ!」


これによりおじは心を入れ替え、二度とネットで誹謗中傷しなくなったという。


HAPPY END

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