よのクエスト

「俺は勇者。お前はNPCだ」


よのは病んでいた。よのがメタ思考を高めに高めた結果、既によのはこの世界を仮想世界にしか思えなくなっていたのだ。


「いきなりどうしたのよの」


困惑しながら答えるおばぶに対して、


その声が聞こえてるのかいないのか、よのは虚に呟き続ける、


「じゃあ魔王は何だ?」


「いきなり魔王とか怖いよよの。それってデュラチャの魔王ってこと?」


「いやこの世界の魔王だ」


「!?」


その発言にデュラチャ民に衝撃が走った。


「イーロンマスク?」


おばぶが尋ねた。


「いや違う。魔王はこの世界に肉体を持つ存在としていないことは確かだ」


「なんでわかるの」


「俺には波長がわかるんだよ」


よのは宇宙に導かれた結論を持ってそう答えた。


「エ"ェェイ"ィメン"ッッ!!!」


そこに唐突にrememberが乱入し、


「つまる所はぁ、物語に終焉をもたらす存在、人生で打ち倒すべき最後のライバル。そういう存在を求めてるんだろう?」と彼もまた宇宙に導かれた存在だというように話に割り込んくる。それに気を良くしたよのが、


「俺ってさゲームでいうとレベル99とまでは行かないけど、90くらいはあるんだよね。そしたらそんじょそこらの雑魚なんて相手にならんわけよ」


「え、じゃあさ。うちは何レベルくらい?」


「おばぶはレベル10とかでしょ」


それはおかしいだろと怒るおばぶを諌めた後に、


「本当は俺はもっとレベルが高い奴と戦いたいんだけど結局お前らみたいな雑魚ばっかなんだよ。だからさ、しょうがないからお前らの低レベルにあわせて手加減してやってんだよ。わかってる?俺の優しさに感謝してほしい」


よのの傲岸不遜な物言いに対して全く気にしてない様子でrememberは問う、


「つまりレベル100の魔王を探してるってこと?」


「いやレベルの話はあくまで人間に対する尺度であって俺は魔王は人間ではないと考えてるよ」


「ほう?」


「俺は多元宇宙論を信じてる」


「並行世界の宇宙が複数存在してるという仮説だな」


「ああ、であるならば魔王も複数存在する可能性があるということだ。でもおかしくないか?」


「1人の魔王を倒してハッピーエンドってならないとこ?」


「まあそうだね。結局終わりがないんだよ」


「この話みたいに?」


「馬鹿は黙っとけ」


よのは茶々を入れたばぶりしゃすを冷たくあしらい、


「俺は目的思考が強いからさ、最強を考えていく上でも1番強い奴を倒して勝ちっていう明確なゴールが見えないのは気分が悪いんだよね」


「おじが教えたるで」


「!?」


答えのない答えに救いを見出したのは、なんとおじだった。


「お前らそもそもRPGのゲームやったことないんか?」


「いやあるけど」


「あるな?ならわかるやろ」


「もったいぶらなくていいから教えてよおじ」


「前な、おじの姪がドラクエやってん。でな、魔王を倒してゲームクリアしたこと自慢してきたから『世界を救えて偉いね』って褒めたんよ」


「うん」


「そしたらその姪『おじさんも働いて家庭を救えたらいいね』とかほざきよったん。おじブチ切れてゲーム機叩き壊したったわ」


「うわぁ……」


おじの心の狭さにリスナーたちはドン引きする。


「つまり?」


「わからんか?魔王を倒した勇者よりおじのが強いっちゅうことや」


ファハハと笑うおじに対してみんなは冷ややかな視線を送っていた。


「おじより強い奴なんてこの世にいーひん。魔王どころじゃない、おじは神や!お前らは全員おじの手駒や!」


おじが叫んだ瞬間、


「うっ!」


おじの身体が音を立てて倒れ込む。


「我らの使命は我が神に逆らう愚者を


その肉の最後の一片までも絶滅すること───AMEN」

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