第3話 偶像の素顔と、聖刻

「お昼からずっと、このニュースばっかりで嫌になるわ・・・。民放はどのチャンネルをつけてもこの女優さんの自殺のニュースばかりよ」

「本当だよ。多感な時期の子達や、精神的に追い込まれているような人が影響を受けたらどうするんだ。

夕飯時、穂波家では、テーブルを囲みながら、茜の両親はそんな会話をしていた。その会話には特に関わる事なく、茜は黙って味噌汁の椀を口に運ぶ。

「『この世界にサヨナラを』か・・・。どうせ、可哀想な自分に酔っていたんじゃないの?この人の事は今日初めて知ったけど、仕事の来ない芸能人なんて他にいくらでもいるんだし、あの年で死ぬ事なんてなかったのになぁ・・・」

父親は缶ビールを一口飲んだ後、もう今日だけで何度目になるか分からない程、テレビでも流れている、例の元アイドルグループの女優の遺書の一文に、そんな感想を述べた。

穂波家の、食卓の風景はいつも淡々としている。一応、茜も同じテーブルを囲んで朝も夕も共にする。しかし、両親は特段、茜に関心のある風はなく、テレビの流すニュースに適当に相槌を打つような会話をするばかりだ。

思い出したように、ほろ酔いの様子の父親は、テーブルの反対に座っている茜にこう言った。

「茜はまぁ、大丈夫だとは思うが、あまりこんなニュースは見過ぎるなよ。お前はいつも冷静だから、感化されるような事はないと思うけど」

そう言うだけ言って、もう、女優の自殺のニュースには興味はないとばかりに、さっさとチャンネルを変える。野球中継が始まっていた。茜はスポーツには関心は一切ないから、親にテレビをスポーツ系の番組で占領されると、そそくさと自室に退散する。元より、今日は食欲も大してなかった。

「あら?もういいの、茜?」

椅子を引いて立ち上がった茜に、一応、母親は一声かけるが、

「うん、あんまりお腹、空いてなくって・・・。それに今日は課題も多いから、早めに済ませときたいなって思って」

そんな、本当に当たり障りのない回答を述べて、茜は食卓を後にする。母親も

「あら、そう。いつも遅くまで熱心に勉強してるみたいで偉いわね」

と素っ気ない返事を返してくるだけで、それ以上の関心は示さなかった。

茜は、自分の部屋に戻り、灯りをつける。そして、やっと一息つける心地がした。


穂波家は、特別に、世間で言うところの「毒親」であるとか「親からのモラハラ」などが存在するような家庭ではない。表面的には至極平凡な家庭である。

ただ、家の中を、極度の無関心な空気が占めているという点を除いては。

両親と茜の関係は、特に悪くはないが、お互い、あまり干渉する事はなく、ドライな関係だった。茜が望めば、親はお小遣いだって渡すし、勉強の為に必要と言えば、茜専用のパソコン等もすぐに買い与えてくれた。しかし、茜が、毎日学校にも行って、それなりの優秀な成績を維持して、特に問題も起こさない、「手間のかからないいい子」である限りは、彼女の内面に踏み込んでくる事はまずなかった。

それが、今の茜には都合が良かった。

課題が多くて早く済ませたいからというのは、早くこの部屋に引っ込む為の口実だ。

茜はすぐさま、机に向かうと、専用のノートパソコンを開く。検索エンジンに、今日、血晶を用いて自殺したのでは、と噂されている、例の女優の名前を打ち込む。

「○○ 自殺 何故」「○○ 血晶 聖刻」「〇〇 血晶 メンヘラ」など、いくつもの予測候補が並ぶなか、取り留めもなくそれらを上から順番にクリックしていき、正否の分からない情報の洪水の中へと泳ぎ出す。

もう、ネット上の「まとめサイト」の類では、「【悲報】○○の遺書の内容がヤバい・・・」とか、「流行の国産流動体宝石、『血晶』がヤバすぎる件について」などのタイトルで埋め尽くされていた。

「○○さん・・・、一躍、有名人になったね。貴女の事を完全に忘れていた人達まで、貴女の死に右往左往してる」

そんな独り言を言いつつ、ネットの情報を漁っていく。

茜は、その中で、多くの写真を目にした。自殺の数日前に、例の女優が自身のブログか、SNSのアカウントに投稿して、また直ぐに削除していたという写真だったが、多くの人がその画面を写真に収めて、保存していたらしい。

「何これ・・・!」

その写真を見て、茜は思わず、椅子から腰を浮かしかけた。

『これって、血晶の都市伝説のまんまじゃね?』

というコメントと共に、アップされていたその写真に写っていたのは、女優の首筋の下・・・部位的には、丁度、左右の鎖骨の合間あたりを自撮りした物らしかった。

そこには、二つの、雪の結晶を重ね合わせたような、複雑な紋様が、火傷の痕のような紅い線でくっきりと肌の上に刻み付けられていた。

「二つの血晶の模様が合体してる・・・。これって、強い感情や思いを通じ合わせた、血晶を持つ二人の人間の体にしか浮き上がらないって言われてる、聖刻・・・⁉」

血晶は、茜も流行に乗って、何となく親にせがんで買ってもらったに過ぎないから、詳しい訳ではない。

茜の基本的な知識としては、現在、日本各地で突如として、爆発的に産出するようになっており、採掘時はまるで、血液のような紅い流動体である事。

そして、それを丁度良い大きさに掬い上げると、自然に固まり始めて、雪の結晶に類似した美しい、六角形の結晶を形成し、そのパターンは、数例しか報告のないレアな形態も含めると1000種類近くが確認されているらしい事。

‐茜の知る情報は、その程度に過ぎず、血晶が世間で売れるに伴って、次第に広がり始めた都市伝説も、少し耳に挟んだ程度でしかない。

「運命の相手に出会った時、お互いに血晶を持っていたら、その血晶は反応し合い、互いの体に、刻印を刻み付ける」

「そして、その相手と結ばれた時には、永遠の契りである事を示す為に、お互いの血晶の紋様を重ね合わせた、同じ形の『聖刻』に刻印は進化し、永久的にお互いの体に刻み付けられる」

確か、そんな話だった筈だ。

ネットに出回っている、自殺した女優が、死の直前に投稿した写真の、この複雑な紋様・・・これがもし、血晶の起こした奇跡とされる「聖刻」であるならば、意中の相手は、まだこの世にいる事になる。

『これが体に現れたって事は、誰か、好きな相手を残して、○○って人は死んだって事・・・?』

まとめの反応も、概ね、茜の推測と同じ内容だった。そして、自殺した○○の思い人は一体誰だったのか、残された公式のブログやSNS上のやり取りから読み解こうとするような流れに変わっていった。

茜も、今まで開いた事もなかった、この女優のブログにアクセスして、彼女の遺した言葉を読み込んでいく。

年を追っていく毎に、更新の頻度が、まばらになっていき、2か月も更新のない期間もあった。その頃から、もう彼女は死を考え始めていたのだろうか。

そして、長い空白期間を挟んで、久しぶりに更新された彼女のブログの文章を見た時、茜は引っ掛かるものを感じた。

『好きになってはいけない相手を好きになって、許されない関係を今日までも引き摺ってしまった。この国では、あの子と真の意味で結ばれる事は出来ない。家族にもなれない。どうしたらいい?』

その文章は、どう読んでも、報われない恋に苦しんでいる一人の女性の姿を現していた。

相手が誰かなどは流石に明記はしていなかったが、「あの子」という呼び方に、茜は引っ掛かりを感じたのだ。文脈から、交際相手の事なのは間違いないが、男性が相手だとすれば、違和感を覚える言い回しだった。それに、「この国では、真の意味で結ばれる事は出来ない」というのも不可解だった。それ程の障壁のある相手との交際だったのだろうか?

結局、その時が、彼女の秘めた思いに関する手がかりとしては最初で最後の書き込みであり、それ以降のブログには、近況報告のようなものしかなかった。SNSの方も見てみたが、更新頻度は極めて低く、内容も手がかりになるような物はない。コメントが、最近の書き込みではほぼゼロ件が続いていた事が、彼女が忘れられかけた存在であった事を物語って、酷く寂しくかんじられた。

「この、血晶に関する事件は、まだ終わらない気がする・・・」

茜は、自分の胸元に一瞬、熱を感じた。今日、学校で、霧島椛と偶々、出会った際に、熱を感じたのと同じ場所だ。手鏡を取りだして、パジャマの上のボタンを緩め、眺めてみる。

昼間にトイレの中で見た時より、かなり薄くはなっていたが、茜の持つ血晶の形「樹枝六花(じゅしろっか)」に酷似した、紅い線が微かに見える。指先でなぞると、ヒリヒリした感覚が伝わってくる。

「あの女優さんの写真の物より、まだずっと薄いけど・・・似てる。この刻印・・・」

あの時、霧島椛は、自分の胸元を庇うように、手で押さえていた。あれが、もし、茜と同じ、刻印の熱さ、痛みを感じていたのだとすれば・・・。

「都市伝説の通りなら、霧島さんが、私の運命の・・・⁉いやいや、どうして・・・?ありえないでしょ。」

茜は、頭の中に浮かんできた彼女の姿を、頭を大きく振って消し飛ばす。霧島椛と、自分が、運命の相手同士?どう考えてもつり合いがとれていない。

彼女は、中性的な言葉遣いと麗しい容姿、それに教養も豊かで、いつも、取り巻きの女子達の輪の中で、学校のアイドル、柊木沙耶と共にいる。そこに自分が入り込む余地などある筈がない。

「柊木さんも、SNSいくつも掛け持ってて、フォロワーもすごくてちょっとしたインフルエンサー?って聞くし、学校の外でもまるでアイドルだし・・・。あの人こそ、霧島さんの相手には相応しいよ・・・」

あの二人と、空っぽの私は違う。生きる意味も分からないままに、自分は毎日を惰性で磨り潰しているに過ぎない。何も、価値ある物を持っている訳でもないのに、自分は生きている。

血晶は意思を持つというが、自分に、霧島椛が運命の相手だと伝えようとしているのだろうか。通学鞄に入れたままにしていた、樹枝六花型の血晶のネックレスを取りだして、机の照明の下で、それを宙に掲げる。

「貴方に意思があるのかなんて分からないけど、でも、霧島さんが、運命の人だなんてありえないよ・・・。何も、あの人と私に共通点も見つからないのに」

紅い血晶は、照明を照り返してキラキラ光りながら、特に反応する事はなかった。

やはり、霧島椛がいなければ、彼女も持っている筈の血晶が近くになければ、物言わぬ綺麗なただの石になってしまうようだ。

掌に乗せても、今は、寧ろ、ひんやりと冷たさが肌に沁み込むように感じる。昼間の事は、白昼夢だったとでも考えた方が、まだ合理的に思えてくる。

「都市伝説なんて、根も葉もない嘘だよね、やっぱり。現に・・・こうしたって、貴方は少しも形を変えてなんかくれないし」

掌に乗った血晶に意識を集中させてみる。意思が通じ合っていれば、血晶は自在に変化するという噂を、もう1回試してみたくなったからだ。しかし、何も起こらない。

それは、昼間に感じた、あの異変は幻だったかのように、茜の意思に何も反応しない、ただの血晶に戻っていた。

何にも姿を変えず、何にもなれない血晶の姿が、自分そのものを現しているかのように茜には思われた。茜が選んだ樹枝六花型の血晶も、一番、周りでも身に着けている人が多く、無難な型だったから選んだに過ぎない。茜の選択はいつも、「無難に、『人並み』から突出しないように」という考えの元でしか行われない。

「私も、この血晶も似た物同士なのかもしれない・・・」

昼間に、胸元の肌を焼く感覚を覚えた時に、茜の心の中に沸き起こった、とある期待は早々に消え去りつつあった。

この、死ぬまで惰性に続いていくように思われる人生から、自分を大きな物語の中に連れ出してくれる、何かが始まったような、そんな気持ちがしたのは、やはり錯覚に過ぎなかったのか。

溜息を一つ残して、パソコンの傍に血晶を置く。再び、ネットの方に目を向けて、いつも何となく流し見している、SNSのページを開くと、そこでは一つの騒動が起こり始めていた。とある書き込みに、茜の目が留まった。

『ヤバいよ・・・、自殺した○○と同じ元アイドルグループの△△が、『これから死にます。ファンの皆、ごめんなさい。愛する○○と同じところへ、私も行きます。この世界にサヨナラを』って言ってる!』

『本当・・・、なりすましのアカじゃないの?』

『いや、さっき見てきたら、本物の△△の公式アカだった・・・!』

今日の昼の事件に続いて、何か、ただならぬ騒動が起こり始めているのを目の当たりにしていると、茜は直感で悟った。


柊木沙耶は、ベッドに横になったまま、スマホの画面に映る、自分のSNSのアカウントの、フォロワー達の声を、今日も満足気に眺めていた。

『SAAYAちゃんなら、絶対に、好きな人と結ばれるよ、大丈夫!』

『SAAYAちゃんが悩んでる恋の内容が、どんなものかは分からないけど、応援してるから!』

SAAYAというのは、このアカウントで沙耶が名乗っている名前だ。学校内の友達にもこのアカウントの存在は公表しており、友達と、旅行でテーマパークに行った時や、新しくオープンしたお店に行った時の写真など、色々な写真もアップしていた。「アイドルみたいに可愛い!!」と、瞬く間に高評価が集まり、学校内でもこのアカウントの事は知れ渡る程度には、現実だけでなく、ネットの世界でも沙耶はちょっとした有名人だった。

最近は、ずっと、「報われるか分からない恋に悩む少女」という姿をずっと演じて見せている。安い同情を引いて、フォロワーの注目を浴びる為の、沙耶の作戦だった。

『報われる望みの薄い恋』をずっと、胸に抱いているのは、事実ではあったが・・・。

「皆、私が恋してる相手が、同性だって知ったら、どんな反応するだろうな・・・」

フォロワー達の、歯が浮くような、「励ましの言葉集」のようなマニュアルがもしあったなら、そこからそのまま引用してきたようなコメントを見て、沙耶は自嘲気味に笑みを浮かべた。今は、皆揃って優しい言葉をかけてくれる彼ら、彼女らのうちの何人が、言葉を失い、中には離れていくだろうかと考えながら。

「椛が恋をする気はなくても、私は、この気持ちを諦めないから」

目を閉じると、少し甘い金木犀の香りが混じった風に、紅葉がひとひら、またひとひらと乗り、舞い落ちていたあの秋の日が鮮やかに蘇る。額に、沙耶の唇の不意打ちを食らった時の、幼い椛の、紅葉と同じ色に染まっていくその顔も。

自分のアカウントへの、フォロワー達のコメントを一通り見た後、何気なくトレンドの一覧を眺めていたら、とある言葉が、日本のトレンドの順位で急浮上していた。

『これから死にます』『この世界にサヨナラを』

沙耶は、急ぎ検索をかける。すると、とある、アイドルグループ出身の女優の公式アカウントに辿り着いた。

「この人って、確か今日、自殺したタレントと、同じアイドルグループの卒業生よね・・・」

沙耶は、忙しく画面を下へとスクロールしていき、彼女の書き込みを見る。問題の書き込みの後に、2枚の写真がアップされていた。

一つは、机の上に投げ出された、血晶をあしらったネックレス。

もう一つは・・・かなり、スマホのカメラを近づけて撮影したものらしく、写真は暗く、何が映っているのか見えづらかった。しかし、目を凝らしてみると・・・沙耶は戦慄した。

「嘘・・・これって、血晶の都市伝説だって言われてた、『聖刻』・・・?」

『聖刻』。確か、お互いに血晶を持ち、思い合う二人の気持ちが完全に重なった時に、お互いの持つ血晶の紋様を重ね合わせた、同じ刻印が、二人の体に現れる。

確か、そう言った内容だった筈だ。今、写真に薄く写っている、複雑な紋様は、二つの雪の結晶を重ね合わせた物に見える。少なくとも、こんな紋様の結晶は沙耶も見た事がない。

その写真と共に、コメントが残されていた。

「これが、私と、○○の間の愛情の証です。同じグループにいた時からあの子とは、好き合っていた。遂に念願叶って、血晶の『聖刻』を、あの子と二人で、同じものを持つ事が出来て、これからだと思っていたのに・・・あの子を救えなかった。長い間、私が同性愛者であった事を隠していてごめんなさい。そして、あの子がいなくなった世界で私は生き続ける意味を見いだせないから、この世界にサヨナラを、告げます。勝手な事をして、本当に、ごめんなさい。今の気持ちは、到底ここで書き切れるものではないから、ちゃんと、最期のお手紙を遺していきます」

それを最期に更新は途絶えていた。ファン達が、リプ欄に「待って、嘘でしょ⁉死なないで!」「どうか落ち着いて!」「事務所は何してるんだ!早く警察にも相談を!」とか、そんな言葉を山のように送ってきていて、阿鼻叫喚の様相を呈していたが、彼女からの反応は一切なかった。

全てを読み終えた後、沙耶は、悟っていた。この女優も、それに、今朝自殺した、あの女優も、自分と同じだったのだと。

同性愛者である事を隠し通して、この世界で、ずっと生きづらさを感じて、日々を過ごしていたのだと。

「そうか・・・この人も、今日亡くなったあの女優さんも、私と同じだったって事じゃん・・・」

沙耶は、スマホをベッドの上に放り出すと、机の上に置いていた、血晶のネックレスを手に取り、それを天井の照明の下に翳して、仰ぎ見る。市販で出回っている血晶の中でも、その豪奢さで人気の高い、「角板付樹枝」型の血晶の、紅い表面に自分の顔が映り込む。

紅の血晶に映る自分の顔に、その長い睫毛が縁どる美しい二重瞼の目の中に、暗い情念が渦巻いているのが見えた。それは、憎しみの炎にも見えた。

血晶は、今の沙耶の心までも映し出しているようだ。この血晶の中に映る表情こそが、学校でも、ネット上でさえも偶像を演じる自分の素顔だと思った。

『きっと、あの二人は・・・、同性愛者である事を隠し続ける事に、きっと苦しんでいたんだわ。勿論、それだけが死を選んだ理由の全てではないにしろ、ね・・・。今朝自殺した、あの女優さんも、自分の恋愛対象についてなんて、話していなかった。本当の事を言えば、ネットにはびこる、あのクズみたいな奴らに・・・同性愛なんて異常者だ、自分の周りにそんな人間はいないと信じて疑わない奴らに攻撃され、笑い者にまでされるから。今、私だけでなく、ネットの皆も、この瞬間に、二人の、社会への復讐を見せつけられてる。自分達の存在を、いない者として扱おうとしてきた、こんな社会に』

沙耶は、かつてない高揚感を味わっていた。今の表情は、学校の誰にも見せられない。学校のアイドルなどとは程遠い素顔だから。

「きっと、この二人は、今日の死を以て、皆、絶対忘れる事は出来ない、『特別な二人』になるわ。血晶によって結ばれた二人の、秘めた愛と、連鎖する死を見せつけられてね」

間もなく、社会はその瞬間に直面するだろう。


「女優の△△が、今朝の○○の自殺と同様に、頸部を刺して出血多量で死亡しているのが発見された。遺書が見つかり、自殺と考えられるが、頸部を刺すのに使用されたと見られる刃物類などは見つかっていない」という速報が駆け巡ったのは、SNS上に衝撃的な書き込みが残されてから、1時間程のちの夜更けの事だった。


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