15.偶にはこういうのもいいのかもしれない。
「……ていうか、もしかして私お邪魔虫だったりする?」
「うん?」
「え?」
「いや、だって二人きりの方がいいでしょ?」
水原の話が終わってから、月宮は何かに気付いたような顔をして、そんなことを言ってきた。
落ち着いたため、恋人同時である俺と由佳、そして自分という状況が急に気になってきたのだろう。
「別にそんなことはないよ? ね、ろーくん」
「ああ、別にいてくれて構わない」
「そうなの? うーん……それならちょっと興味があるし、いさせてもらおうかな?」
俺と由佳の言葉に、月宮は少し悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
その笑みに、俺と由佳は顔を見合わせる。こういう顔の時の月宮が何をするかは、大体予想がつくからだ。
「由佳とろーくんは、いつもはどんな感じなの?」
「どんな感じ?」
「二人で、どういう風に過ごしているのかな? よかったら、それを私に見せて欲しいなぁ」
月宮はとても楽しそうにそんなことを言ってきた。
やはり彼女は、俺達をからかって楽しもうとしているらしい。
そのことに、俺も由佳も少し安心していた。いつも通りの月宮に戻ったなら、何よりだ。
「ろーくん、それじゃあいつも通りにいこうか?」
「うん? ああ、そうか。そうだな」
そこで由佳は、俺との距離を詰めてきた。
由佳の行動の意図は、すぐに理解することができた。少し恥ずかしい気もするが、俺はそれに乗ってみることにする。
「ろーくん、あったかい……」
「ああ、由佳もあったかいな……」
「え? な、何それ?」
俺と由佳の様子に、月宮は顔を赤くして困惑していた。
月宮としては、俺達が恥ずかしがる反応を期待していたのだろう。
しかしそれをわかっていた由佳は、月宮の提案に乗ったのだ。彼女を逆にからかうために。
「何って、千夜がいつもの私達を見たいって言ったんでしょ? 私とろーくんは、二人きりだとこんな感じだよ?」
「そ、そうなんだ。常々聞いていたけど、やっぱり結構熱い感じなんだ……」
由佳の言葉に、月宮は縮こまっていた。
かなり恥ずかしそうにしている。そんな彼女は、とても珍しい。
しかし由佳は、一体普段俺とのことをどのように伝えているのだろうか。それが少々気になってしまった。
「やっぱり、私はお邪魔虫かも……」
「そんなことないって、言ってるでしょ?」
「いやだって、こんなの見せられたら……」
「千夜が見せて欲しいって、言ったんでしょう?」
「そ、それはそうだけど……」
月宮をからかう由佳は、なんだかとても楽しそうだった。
いつもやられてばかりなので、偶にはこういうのもいいのかもしれない。俺はそんなことを思うのだった。
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