13.このメンバーで集まるのは初めてのことだ。
年初ということもあって、俺は両親と一緒に祖母の家に遊びに行っていた。
夏休みの時は由佳と一緒だったが、今回は別行動である。彼女も彼女の祖父母の元に、行っているからだ。
祖母の家はそこまで遠いという訳でもないため、俺達の方は日帰りで帰ってきた。しかし由佳の方は泊まりであるため、今日の俺は暇している。
「それで、どうしてこうなったのやら……」
「藤崎君? どうかした?」
「いや……」
そんな俺は、竜太に声をかけられてファミレスまで来ていた。
そこに集まっているのは、暇な四条一派のメンバーだ。呼び出した竜太に磯部、それから水原がいる。このメンバーで集まるなんて、初めてのことだ。
「珍しい面子だと思ったんだ。このメンバーで集まることなんてあるのか?」
「まあ、確かに珍しい面子ではあるかもしれないな。四条一派と呼ばれてはいるが、基本的には男女で分かれて集まるし、俺達も基本は三人で行動するからな……」
俺の言葉に、竜太は苦笑いを返してきた。
俺が知らないという訳でもなく、やはりこの面子は珍しいようだ。
「ただ、孝則とは予定が合わなくてだな……舞は祖父母の家に行っているし」
「本当は千夜も来る予定だったんだけど、急用が入ったみたい。家の用事を優先するなんて、去年まではあり得ないことだったけど、これは多分いいことかな」
年初であるため、それぞれ色々と予定があるのだろう。いつものメンバーがかけるのも、仕方ないことなのかもしれない。
もっとも、それ程心配する必要はないだろう。珍しいといっても、いつも一緒にいる面子だ。それで不和が生まれるということもないはずだ。
心配なのは、俺の存在だろうか。といっても、磯部以外の二人とはそれなりに仲が良いし、多分問題ないと思うのだが。
「しかし、結果として涼音は女子一人になってしまった訳か」
「ああ、確かにそうだね。まあ、別にそれを気にしたりはしないけど」
「涼音はいつもクールだなぁ。そのクールさが、時々すごい切れ味をすることがあるけど」
水原の言葉に対して、磯部は頬をかいていた。
今まで色々とあったのだろうか。その表情からは、そんな感情が伝わってくる。
確かに、水原はクールであるといえるだろう。俺も初対面は、そう思っていた。
「第一印象は俺もそうだったが、もう水原をクールとは思えなくなってきたな……」
「え? そうなの?」
「まあ、藤崎と話す時に熱量が上がっているのは自覚してるよ。初めてできたオタク友達だし」
「それは光栄なことではあるか……」
水原は、俺に電話やメッセージでアニメなどの感想を伝えてくることがある。
その時の彼女のテンションはクールとはかけ離れており、俺にとってはそちらの印象の方が最早馴染み深い。
「そうだ。今日はせっかくだから、皆で映画でも見に行こうか」
「え? 映画?」
「最近人気のアニメの映画だよ。多分、皆知っていると思う。私はもう一回見に行っているんだけど、すごくいい作品だったからもう一回は行きたいと思っていたんだよね。この人数で行けば、入場特典も結構貰えるし、料金は私持ちでいいから」
「お、おおっ……」
水原の勢いに、磯部は少し面食らっていた。
それを見ながら、俺と竜太は顔を見合わせる。なんというか、今日も楽しい一日になりそうだ。
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