12.おみくじを引くのは久し振りである。
おみくじを引くのは、随分と久し振りのことである。例によって、由佳と一緒に初詣していた頃以来だろうか。
おみくじとはいえ、新年は幸先よく始めたい。できればいい運勢であって欲しいものである。
とはいえ、俺は別に運がいい方という訳ではない。というかむしろ、こういう時には悪い方に偏りがちであるような気さえする。
「ろーくん、どう?」
「……大凶だな?」
「あっ……」
思っていた通り、俺の運勢は悪いものだった。
というか大凶というと、一番悪い運勢である。どうやら幸先がいいスタートは、できなかったようだ。
「由佳はどうだ?」
「私は、大吉だったよ?」
「おお」
俺が質問すると、由佳は可愛らしくおみくじを見せてくれた。
そこには、確かに大吉と記されている。由佳の方は、最もいい運勢を引き当てることができたらしい。それは俺にとって、嬉しいことである。
「そういえば、由佳は昔から運が良かったな……」
「あ、うん。それはよく言われるかも」
「逆に俺は、いつもこんな感じだな。まあ、特別運が悪いとは思わないが……」
俺は少しこれまでのことを思い出していた。
おみくじや占いなどにはいい思い出がないが、普段の生活においてそこまで運が悪いという訳ではないような気がする。
というか去年などに関しては、むしろ運が良かった。席替えの度に由佳の近くの席になっていたし、恵まれていたといえるだろう。
「……いや、席替えなんかは、由佳の運だったのか?」
「え? あ、どうなんだろうね?」
しかし俺は、すぐにあることに気付いた。
席替えは別に、俺だけの運に左右されるという訳ではないだろう。由佳の運も関係してくるのである。そう考えると、俺の運は良くないといえるのかもしれない。
「でも、もしもそうだとしたら安心できるかも」
「安心?」
「だって、私の大吉が、ろーくんの大凶を打ち消せるってことでしょ?」
「それは……」
少し自嘲気味に笑みを浮かべていた俺に対して、由佳は眩しい笑顔を向けてきた。彼女のその笑顔を大吉と記されているおみくじが、なんだかとても頼もしい。
由佳は時折、そういったかっこいい一面も見せてくれる。そういう彼女も、とても魅力的だ。
「そう言ってもらえると、こちらとしても心強いよ」
「ううん。だって、私とろーくんは、運命共同体ってやつだもん」
「運命共同体か……それならやっぱり、由佳を幸せにできるように頑張らないとな」
いつも思っていることではあるが、俺は本当に恵まれている。
こんな素敵な彼女がいること、俺は改めてその事実に感謝するのだった。
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