8.今年はたくさんの出会いがあった。

 俺と由佳は、最寄りの神社まで来ていた。

 俺達は、ここで年を越すことになっている。四条一派や他の友達とそう約束しているのだ。


「あ、由佳、ろーくん、こっちこっち!」

「む……」

「あ、千夜、それに涼音も……」


 神社の入り口付近で、月宮が俺達に向かって手を振っていた。隣には水原もいる。

 どうやら、二人は俺達よりも先に着いていたようだ。辺りに他に人はいないので、他はまだといった所だろうか。


「二人とも早いね?」

「家は送迎がついているからね。この時間に出掛けるってなると、それ以外許してくれなくてさ」

「それで、千夜が私も拾ってくれたんだ」


 由佳の質問に、二人はそのような返答をした。

 話からして、月宮は今回の年越しの許可を親からきちんと取っているようだ。親子関係で色々とあったのだが、現在は良好な関係を築けているらしい。


「それにしてもさ、もう一年が終わるんだよね。そう考えると、なんだか不思議な感じ……特に、ろーくんを見るとそう思っちゃうかも」

「え? ろーくんがどうかしたの?」

「だってさ、考えてみれば、ろーくんとは今年の四月に知り合った訳でしょ? それがなんか、変な感じっていうか……」


 そこで月宮は、俺の方を見てきた。

 彼女の言わんとしていることは、なんとなく理解することができる。出会ってから八か月経っているという事実が、信じられないのだろう。確かに、もうそんなに経っているのかという感じだ。


「まだ八か月しか経ってないなんて、信じられないよね? 涼音もそう思わない?」

「あーあ、言われてみればそうだね。藤崎とはもうずっと昔から友達って感じがするかも」


 二人の言葉に、俺は少し面食らっていた。

 俺の予想は、当たらずとも遠からずといった感じだったようだ。

 出会ってから八か月という事実は信じられないが、俺とは逆の感じ方をしている。それはなんというか、少し不思議なものだ。


「あはは、まあ、二人には私が散々ろーくんのことを伝えていたからね」

「ああ……」


 由佳の言葉に、俺は重要なことを思い出す。

 そういえば、由佳が俺のことを話しているため、皆は俺に親近感を覚えていることがあるのだ。

 そのことが影響して、俺と二人の間に認識のずれがあるということだろうか。


「うーん、それとは関係ないような気もするかな。由佳が言ってたろーくんと、実際のろーくんが同じって訳でもないし」

「藤崎とは色々とあったからね。私の秘密を明かすことになったのも、藤崎がきっかけみたいなものだったし、結構色々あった一年だったよね?」

「なるほど、二人にとってもろーくんとの出会いは転機だったって、ことかな?」

「まあ、そんな感じかな?」


 月宮と水原の言葉に、俺はなんというか妙な気持ちになっていた。

 二人との出会いも含めて、今年はたくさんの出会いがあった。それら全てが掛け替えのない出会いだったといえるだろう。

 だからこそ、俺にとってこの一年は早いものだったのかもしれない。俺はそんなことを思うのだった。

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