7.俺は両親と一緒に彼女の家にお邪魔している。
俺は両親と一緒に、由佳の家にお邪魔していた。
俺が一人で訪ねたり、由佳がこちらを訪ねたりすることは今までも何度かあったが、こうして家族で訪ねるのはそうあることではない。
それでは何故今日家族で訪ねているかというと、今日が年の終わりであり、あるものを食べるためだ。
「すみませんね。お邪魔してしまって……」
「いいえ、気にしないでください。せっかくですからね」
「ふふ、なんだか、懐かしいですね。二人が小さな時は、こうやって皆で年を越していましたし」
「そうでしたね……あの頃から、家はお邪魔してばかりで」
俺達の両親は、そのような会話を交わしていた。
俺と由佳が小さな頃は、こうやって二つの家族で年を越していた。それは確かに、懐かしいものである。
もっとも、俺と由佳は年を越す前に寝ていたので、実質的には年越しといえるかどうかは怪しい所なのだが。
「まあ、二人は今年は出掛けてしまう訳ですけれど……」
「友達と年越しなんて、すごいですよね。家のは、去年までそういうことはしていませんでしたから、少し驚いています」
「夜出かけるのは、流石に心配なんですけどね。でも、すごく安心しているんですよ。守ってくれるナイトがいますから」
「家の九郎にナイトは、少し荷が重いですね……」
母さんは、由佳のお母さんの言葉に苦笑いを浮かべていた。
確かに、俺にナイトは荷が重い。もちろんそうありたいとは思っているが、多分俺も今は母さんと同じような表情をしているだろう。
「いえ、そんなことはありません。ろーくんは、私のナイトです」
「え? あらら……」
「む……」
そんな母さんに対して、由佳は笑顔で言葉をかけていた。
それによって、母さんは俺に生温かい目を向けてくる。その視線が、少しむず痒い。
「ありがとう、由佳ちゃん。この子のこと、褒めてくれて」
「私は、本当のことを言っているだけですから!」
「ふふ、由佳ちゃんは本当にそう思っているみたいね?」
由佳が俺を褒める度に、母さんの温かい視線が飛んでくる。
これも中々に、厳しいものだ。こういう時にどういう態度でいればいいのか、それが俺は未だにまったくわかっていない。
「ろーくんの良い所だったら、何個だって言えますよ?」
「それは嬉しいわね。でも今日は、やめておきましょうか。二人はこの後、用事がある訳だし……」
「あ、そうですね。早く食べないと……」
「……そういえば、そうだな。時間はそんなにないんだった」
母さんの言葉に、俺と由佳は顔を見合わせた。
話に夢中になっていたら、集合時間に遅れてしまう。早く年越しそばを食べておかなければならないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます