6.どうやら夜中にかなり雪が降ったらしい。
辺り一面が白色になるという光景は、中々に圧巻である。どうやら夜中に、かなり雪が降ったらしい。
去年の今頃、朝起きた俺は外を見て驚いたことを覚えている。高校に入る前までは、雪にはそれ程縁のない地域で生活を送っていたのだ。
「こういう風に積もるとわくわくするよね……まあ、実際は大変なんだけど」
「まあ、そうだな。いいことの方が少ない訳だし」
雪を運びながら、由佳は苦笑いを浮かべていた。
子供の時は、雪にはしゃいでいたものである。というか去年の俺でさえ、こういう光景には心が躍っていた。
しかし実際に待っていたのは、雪かきという現実である。以前住んでいたマンションでは住人が雪に困っており、俺も雪かきに駆り出されたのだ。
「でも、こうやって雪で遊ぶことは、やっぱり好きかな……」
「それは俺も否定しないさ。大分いい感じじゃないか?」
「うん。ばっちりだと思う」
今日の朝も、俺は雪かきをした。
俺の家と由佳の家、それぞれの雪かきに参加したのである。
それが終わってから、俺と由佳は雪だるまを作成し始めた。由佳がそうしたいと言い出したのである。
「まあ、最初に言われた時には、少し面食らったことは否めないんだが……」
「えへへ、ごめんね。どうしてもろーくんとまた雪で遊びたくて」
「いや、謝らないでくれ。結局俺も楽しんでいるからな」
「私も予想以上に楽しい」
「そうか。それならよかったよ……よし、これで完成か」
俺と由佳は、雪だるまを完成させていた。
こういうものを作るのは、幼少期以来である。あの時作ったものよりも、クオリティは上がっているといえるだろう。
なんというか、達成感がある。偶にはこうして童心に返るのも悪くない。
「中々いい感じにできたね……ろーくん、一緒に写真撮ろう?」
「ああ、それはもちろん構わない。えっと、俺はこっち側でいいのか?」
「うん。ちょっと待ってね……」
由佳に言われて、俺は雪だるまの横に位置取った。
こういう風に写真を撮ることは、よくあることだ。ただ、どういう顔をすればいいのかは、未だにわからない。
ぎこちない笑みしか浮かべられないのは、情けない話だ。しかしどうしてもうまくいかないものである。
ただ、それも仕方ないことだろう。俺は由佳と再会するまで、そういう自撮りといったものにはとことん縁がなかったのだから。
「それじゃあ、撮るね?」
「あ、ああ……」
スマホに向かって、由佳は眩しい笑顔を浮かべていた。
俺もいつかは、そういう表情を浮かべられるようになるのだろうか。なんというか、あまり想像できないのだが。
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