4.俺達はプレゼント交換をした。
「クリスマスパーティー、楽しかったね?」
「ああ、思った以上に楽しかった。ああいう催しも、いいものなんだな……」
俺と由佳は、由佳の家に帰って来ていた。
彼女の両親は、既に出掛けている。つまり俺達は、この家に二人きりだ。
故に俺は、少し緊張している。やはり二人きりというのは、特別なのだ。
「あ、あのね、ろーくん、今日はお風呂別々にしよっか?」
「うん? あ、ああ、そうだな。俺から入るということでいいだろうか?」
「うん、お先にどうぞ」
由佳は少し恥ずかしそうにしながら、そんなことを言ってきた。
その言葉の意図は、俺だって理解している。クリスマスイブの夜に、二人きりだ。意識しない訳がない。
「さてと、それじゃあそろそろプレゼントの交換といくか?」
「あ、うん。そうしよっか?」
そこで俺は、ある程度意識的に話を切り替えた。
そういう話をするのは、この後だ。今はまだ、そういう雰囲気に持っていくべきではないだろう。
故に俺は、もう一つの大事な用事の話をすることにした。プレゼントの交換、それは元々予定していたことである。
「それじゃあまずは、私から」
「ありがとう……開けてもいいか?」
「もちろん」
由佳は、俺に結構大きい箱を渡してきた。
何が入っているのか、俺はそれを考えないことにする。ここまで来て予想するのは、無粋だと思ったからだ。
俺は無心で、プレゼントの包みを開ける。するとそこには、藍色の布が見えた。
「これは……マフラーか?」
「うん。一応、手作りだよ?」
「これをか? すごいな……ありがとう。すごく嬉しいよ」
由佳からのプレゼントは、手編みのマフラーだった。
最近はどんどんと寒くなっているし、これはとてもありがたい。
それにしても、このマフラーを編むなんてすご過ぎる。そのことも含めて、俺はなんだか涙が出そうなくらい感動していた。
「さてと、それじゃあ俺からのプレゼントだが……」
「ありがとう。開けてもいいかな?」
「ああ、もちろんだとも」
俺が渡した箱の包みを、由佳は丁寧に解いた。
そして彼女は、ゆっくりと箱を開ける。
「これって……」
「その……色々と悩んだんだが」
「包丁だね? ありがとう、ろーくん。私、すごく嬉しいよ」
俺のプレゼントに、由佳は笑顔を浮かべてくれた。
とりあえず彼女は、喜んでくれているようだ。そのことに俺は安心する。そのプレゼントでいいのか、とても悩んでいたからだ。
料理好きな由佳に、その道具をプレゼントするのはおこがましいかとも思っていた。ただ、それはいらぬ心配だったのかもしれない。彼女の笑顔を見ていると、そう思える。
「今までは、お母さんが使っている奴を使っていたから、これは私の初めてのマイ包丁だね……」
「一応、母さんに聞いたりして選んだんだが……」
「ピンク色で、結構可愛い感じだね?」
「それは俺が由佳に似合うと思ったというか……」
「えへへ、それも嬉しいな」
プレゼントした包丁は、柄がピンク色である。やはり俺にとって、由佳に似合う色といえばその色なのだ。
由佳はそんな包丁の柄を愛おしそうに撫でている。本当に気に入ってくれているのだろう。俺はそれが、とても嬉しかった。
「……さてと、そろそろ俺はお風呂に入ることにするよ」
「あ、うん。行ってらっしゃい、ろーくん」
「ああ……」
時間的にも良くなったので、俺は話をプレゼント交換前のものに戻した。
プレゼント交換は終わったが、俺達のクリスマスはまだ終わっていない。いやそれ所か、これから始まるとさえいえるだろう。
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