23.俺はいつまでも幼馴染のものである。
「それで結局、新見は何て言っていたんだ?」
「失恋したけど、まだ可能性はあるから諦めないって感じかな?」
「そうか……」
俺は、由佳の部屋で彼女から今回の三角関係の顛末を聞いていた。
新見は臼井にフラれたが、諦めるつもりがない。ということは、高坂妹の想いが叶うことも難しいということになる。
結局の所、その三角関係はそのままということなのだろう。いや新見が告白したのだから、前進はしているといえるのだろうが。
「気になっているなら、ろーくんも来ればよかったのに……」
「言っただろう。俺は四条一派ではないと」
「四条一派とかそういうのは、周りの人が勝手に言っているだけだもん。私達は、友達だから一緒に行動しているだけで……」
「付き合いの長さとか、そういうこともある。それに、別行動だったおかげで俺は高坂妹と会えた訳だからな」
由佳は、少し不満そうにしていた。
俺が新見の話を聞くのに同行しなかったことが、嫌だったのだろう。ただ、その場に俺が行くべきではなかったとは今も思っている。
こういう言い方は良くないが、俺は新見とそこまで親しくない。あいつが報告をする人物として、俺は適切ではないのだ。
「あ、そうだった。そのことについても話さないと駄目だよね?」
「うん? これは……」
そこで由佳は、携帯の画面を俺に見せてきた。
そこには、見知ったメッセージアプリの画面が表示されている。どうやら由佳は、高坂妹とやり取りしていたらしい。
「静良ちゃん、ろーくんのことすごく褒めてるね?」
「あ、ああ、そうだな……」
「ろーくん、静良ちゃんの前でかっこいい所見せちゃったんだよね……」
「いや、別に特別なことをしたという訳ではないのだが……」
由佳は、なんだか泣きそうな顔をしていた。
それに俺は、困惑してしまう。これは一体、どういう反応なのだろうか。
「由佳、どうしたんだ?」
「ろ、ろーくんがかっこいいっていうのは当然のことだけど、それをいざ他人から言われると微妙な気持ちになっちゃって……」
「微妙な気持ち……」
彼女は要するに、不安だったのだろう。俺がかっこいい所を見せたことによって、誰かが俺に惚れて、俺を取られるのではないかと。
その不安は、理解できない訳ではない。しかしそれは、まったくの杞憂である。
「いや、俺は由佳のものだ。どこにもいかないさ」
「うん……」
俺は由佳のことを、そっと抱きしめた。
俺は、いつまでも由佳のものである。それが揺るぐことなんてない。
きっとそれは、由佳だってわかっているはずだ。ただ時期が良くなかったのかもしれない。
「まあ、色々とあった訳だが、俺達は俺達だ。それは変わるものではないだろう」
「うん、そうだね……」
失恋したという話を聞いて、由佳もきっと落ち込んでいるのだろう。
こうして俺達は、しばらく抱き合っているのだった。
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